ゾウリムシ

ゾウリムシの概要

ゾウリムシは、顕微鏡で観察すると草履のような形をしている繊毛虫の一種であり、科学的には Paramecium caudatum という名称で知られています。さらに広い意味では、ゾウリムシ属 (Paramecium) に属する種全般を指します。この生物は真核生物であり、単細胞の微生物として非常に良く知られています。ゾウリムシは17世紀末にオランダの科学者アントニオス・レーウェンフックによって初めて発見され、日本語名は1930年に動物学者の川村多実二によって名付けられ、その由来は英語での名称「slipper animalcule」の「slipper」が「草履」と訳されたことにあります。

特徴

ゾウリムシは、細胞の長さが90から150µm、幅が約40µmとされており、その形状は平たく見えますが、実際には円筒形に近いです。体表には約3,500本の繊毛があり、これを動かして泳ぐことができます。繊毛は細胞全体にほぼ均一に分布しているものの、細胞口の内部では特別な配置が見られ、食物を効率的に取り込む役割を果たしています。

細胞内部には、排泄および浸透圧調節を行うための構造である収縮胞が存在し、これは大きな星形または花のような形状をしています。収縮胞は水分を管理する重要な役割を持ち、細胞内での水の移動を効率的に行います。さらに、ゾウリムシには2つの異なるサイズの細胞核があり、大核は日常の活動に関与し、小核は生殖に関与しています。

生殖

ゾウリムシは、無性生殖を分裂によって行います。他の繊毛虫同様、体軸に沿って前後に分かれる形で新しい個体が形成されます。有性生殖では、接合と呼ばれる特殊な方法が用いられます。まず、大核が消失し、小核が減数分裂を行って4つの核に分かれ、うち3つが消失します。残った1つはさらに2つに分裂し、これらの核は互いに交換されます。その後、各個体の核が融合し、接合が完了します。

生態

ゾウリムシは淡水の環境、特に水田や池などに生息しています。豊富な繊毛によって自由に泳ぎ回ることができ、遊泳中に障害物に接触すると泳ぐ方向を変えることができます。食性は主に捕食性で、真正細菌を食べることで成長します。特に興味深いことに、ミドリゾウリムシはクロレラを細胞内部で共生させており、光合成によって得た栄養を取り込むことも可能です。一方で、ゾウリムシは大型のアメーバや他の繊毛虫の捕食者となることもあります。

培養

ゾウリムシを培養するには、エサとして細菌や酵母を用意する必要があります。一般的には藁やレタスを煮出し、その煮汁を培地として使用して枯草菌を培養し、エサを提供します。枯草菌が入手困難な場合は市販の乾燥酵母を使用することもできます。また、粉末の緑茶もエサとして採用されることがあります。

このように、ゾウリムシはその独特な生態や生殖方法を持ち、顕微鏡の下での観察に適した生物であるため、微生物学や生物学的研究の貴重な対象となっています。

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