不二越

株式会社不二越について

株式会社不二越（英文社名 NACHI-FUJIKOSHI CORP.）は、東京都港区に本社を構える日本の製造業です。主な事業として、高精度な切削工具、様々な機械に使用されるベアリング、そして特に自動車産業向けの産業用ロボットの製造販売を行っています。東京証券取引所のプライム市場に上場しており、かつては日経平均株価の構成銘柄にも名を連ねていました。

企業の創業の地は富山県富山市であり、長らく本社も富山に置かれていました。しかし、経営効率化と人材確保などを目的として、2017年8月には富山と東京の二本社体制を見直し、東京本社に一本化。そして2018年2月には、本店登記も富山から東京へ移し、本社機能の全面的な東京への集約が完了しました。

同社の製品は、世界中で「NACHI（那智）」ブランドとして知られています。このブランド名は、創業者の井村荒喜が日本の精神的なルーツの一つである熊野那智大社に敬意を表して名付けたものです。また、1929年には昭和天皇が視察された優秀な国産品の中に不二越の金切鋸刃が含まれており、これに深く感動した井村は、天皇が当時座乗していた最新鋭の重巡洋艦「那智」の艦影をモチーフにしたNACHIマークを考案し、商標としました。

社名である「不二越」には、創業者の強い想いが込められています。井村は、日本の産業発展の基盤は機械工具分野の自立にあるという強い使命感を抱き、この抱負を「創業の精神」として社名としました。「不二」という言葉は仏典に由来し、「善と悪」「迷いと悟り」のように現象としては対立したり異なったり見えるものでも、より高い視点からその本質を見極めれば、本来は一つであることを意味します。これは、対立するものを統合し、より高次の段階へ発展していくことを期する思想を表しています。一方、「越」は、創業地の富山を含む北陸地方の古い呼称である「高志（こし）」を意味しています。

不二越の歴史は、1928年12月21日に不二越鋼材工業株式会社として設立されたことから始まります。第二次世界大戦中は軍需生産にも関与し、軍需会社に指定された時期もありました。終戦後には、時代の要請に応じて自転車やその他の民生品の製造に転換。1949年には東京証券取引所第一部に上場を果たしますが、1950年には自転車製造業からは撤退しています。その後、事業構造の変化を経て、1963年8月には現在の株式会社不二越に商号を変更しました。近年の動きとしては、1999年に住友電工ハードメタルとの業務提携、2013年には中国での産業用ロボット生産開始などがあります。

現在の主な事業拠点としては、東京都港区の本社のほか、創業の地である富山県内に複数の生産拠点を有しています。富山事業所（旧富山本社）をはじめ、東富山、滑川、水橋、流杉にそれぞれ事業所を構え、主要製品の生産を担っています。

同社はその長い歴史の中で、いくつかの注目すべき出来事にも関わっています。

ベアリングカルテル事件: 2012年には、他の主要メーカーと共にベアリングの価格に関するカルテル行為が問題となりました。東京地方裁判所は、独占禁止法違反の罪で元役員らに有罪判決を下し、法人としての不二越にも罰金刑を命じました。また、公正取引委員会からも排除措置命令と多額の課徴金納付命令を受けています。
女子挺身隊に関する訴訟: 第二次世界大戦中に女子挺身隊として動員された韓国人女性やその遺族から、損害賠償を求める訴訟が提起されています。日本国内の裁判では原告の請求は退けられましたが、韓国の裁判所で改めて提訴されました。韓国のソウル中央地方法院およびソウル高等法院は、一部原告の訴えを認め、不二越に賠償金の支払いを命じる判決を下しました。この判決は、上告審である韓国大法院によって2024年1月に確定しています。
* 従業員採用に関する発言: 2017年には、当時の会長が中間決算会見の場で、富山県出身者の採用に関する不適切な発言を行ったことが問題視されました。この発言に対し、富山労働局が公正な採用選考の観点から不適切であるとの見解を示し、後に会長は公式に謝罪しています。

地域社会との関わりも深く、富山地方鉄道の不二越線や不二越駅は、沿線に同社工場があることにちなんでいます。また、不二越工業高等学校や不二越病院は、同社が経営母体となって地域に貢献しています。かつては、テレビ番組「ほこ×たて」の企画にも参加し、同社のドリルがその性能を示す場面もありました。

公式ウェブサイトでは、企業の詳細情報や事業内容、最新のIR情報などが公開されています。

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