不可分債権

不可分債権とは

不可分債権とは、複数人が債権者となる場合に、その債権の目的物が性質上分割できないものを指します。例えば、共同で所有する美術品や、複数人で共有する特許権などが該当します。各債権者は、債務者に対して、債権全体について履行を請求する権利を持ちます。

民法改正による変更

2017年の民法改正（2020年4月1日施行）により、不可分債権の定義が明確化されました。改正前は、「債権がその性質上または当事者の意思によって不可分」とされていましたが、改正後は、性質上不可分な場合のみが不可分債権となり、当事者の合意によって不可分としたものは連帯債権として扱われることになりました。これにより、多数当事者間の債権関係が整理され、より理解しやすくなりました。

不可分債権の効力

対外的効力

不可分債権の対外的効力として、各債権者は債務者に対して、債権の全部または一部の履行を請求する権利を持ちます。また、債務者は、債権者の一人に対して履行することで、全債権者に対する債務を履行したことになります。

対内的効力

不可分債権における対内的効力は、債権者の一人と債務者との間で特定の事由が生じた場合に、他の債権者にどのような影響を与えるかというものです。

絶対的効力

特定の事由（弁済、請求、相殺）が生じた場合、その効力は他の債権者にも及びます。これは、連帯債権の規定が準用されているためです。

相対的効力

上記以外の事由（更改や免除など）が生じた場合は、その効力は他の債権者には及ばず、債務者は他の債権者に対して、債務の履行をしなければなりません。ただし、債務者は、更改や免除によって利益を得た債権者に対して、本来ならば分与されるべきであった利益を償還する必要があります。

分割債権への変更

不可分債権は、その性質が変化して分割可能になった場合、分割債権として扱われます。この場合、各債権者は、自己の権利部分のみを請求できるようになります。

まとめ

不可分債権は、債権の目的物が分割できない場合に成立する債権であり、各債権者は債務者に対して全部の履行を請求できます。ただし、一部の債権者に生じた事由は、原則として他の債権者には影響しません。民法改正によって連帯債権との区別が明確になり、債権関係が整理されました。

関連項目

民法
債権
分割債権
連帯債権
不可分債務
法用語一覧

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