不死蝶 (小説)

不死蝶

『不死蝶』（ふしちょう）は、日本の作家横溝正史による長編推理小説で、金田一耕助シリーズの一環として位置付けられています。この作品は、1953年6月から11月にかけて雑誌『平凡』に連載され、1958年には加筆整理された上で、東京文芸社より『金田一耕助推理全集第1巻』として刊行されました。本作の魅力は、過去の事件と新たな殺人事件が絡まり合い、緊張感あふれる謎解きが展開される点にあります。さらに、同作を原作としたテレビドラマも2作品制作され、その影響力を感じさせます。

概要

本作の舞台は信州の架空の町「射水」で、鍾乳洞の中で発生する事件が描かれています。作者が『八つ墓村』を書く際に得たインスピレーションや、過去の海外作品に触れたことで、この鍾乳洞を舞台にした推理劇が構想されたと語っています。金田一耕助が訪れた射水で、彼はかつての事件や人々との邂逅を通じて新たな謎に挑むことになります。

本作では、23年前に発生した殺人事件と、それに関連する現在の新たな殺人事件が織り交ぜられており、作者の以前の作品に見られる時系列を遡るスタイルが一貫しています。例えば、19年前の殺人事件を描いた『女王蜂』や、17年前の失踪事件と現在の事件を扱った「幽霊座」といった作品に共通する要素を持っています。

あらすじ

金田一耕助は、信州の射水の町に住む矢部杢衛から「ある人物について調査してほしい」と依頼を受けます。射水ではブラジルのコーヒー王アルフォンゾ・ゴンザレスの養女である鮎川マリが母君江と共に滞在しており、金田一は彼女に近づけるチャンスを探っていました。しかし、出発前に「射水に来てはならない」という脅迫状が届き、金田一の興味はますます掻き立てられます。

汽車の中で、金田一は頬に傷のある男から23年前の英二殺害事件についての情報を得ます。事件の詳細や矢部家と玉造家の因縁を知った金田一は、この土地の過去と繋がった新たな謎に触れることになります。射水に到着後、金田一は矢部家から鮎川君江の身許を調査するよう依頼され、彼女がかつての事件で自殺したとされる玉造朋子の生き残りではないかと疑います。

玉造家では、今まさに悪化する状況に直面しており、鮎川マリは母を守るための手紙を受け取るなど緊張感が漂っています。朋子と慎一郎との禁断の恋、鍾乳洞での悪夢のような過去の出来事が、人々の運命を左右する中で再び明らかにされていきます。

パーティが開催される中、君江の姿が見えず、金田一たちは彼女を探しに鍾乳洞へ向かいます。そこでの出来事は次第に悲劇へと向かう運びとなり、金田一は矢部杢衛の遺体を発見します。

登場人物

• - 金田一耕助：私立探偵。事件を追う主人公。
• - 矢部杢衛：矢部家当主、金田一の依頼人。
• - 玉造朋子：過去の事件の重要人物。
• - 鮎川マリ：注目のヒロイン、ブラジルのコーヒー王の養女。
• - 矢部慎一郎、峯子、都：矢部家の人々。それぞれの立場から事件に関わる。

このように『不死蝶』は、謎めいた過去や人間関係の複雑さを描きながら、金田一耕助の鋭い推理によって結末へと導くスリリングな物語となっています。

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