与作

与作（よさく）

「与作」は、1978年に発表され、日本を代表する歌謡曲の一つとして広く知られる楽曲です。作詞・作曲を手がけたのは七澤公典氏。最初にこの曲を世に送り出した歌手は弦哲也氏ですが、後に北島三郎氏や千昌夫氏といった人気歌手たちもシングルをリリースし、競作となったことで、爆発的なヒットを記録しました。

誕生の経緯

この楽曲は、NHKの音楽番組『あなたのメロディー』に一般から寄せられた公募作品として誕生しました。作者である七澤公典氏は、かつてジャズギタリストを目指し渡米するも、日本人として本格的なジャズ奏者となることの難しさを痛感し、帰国した直後の時期にいました。海外での経験の反動として、改めて日本の情緒や文化に目を向け、それを音楽で表現しようと試みた結果生まれたのが、この「与作」だったのです。

番組への応募当初は採用を見送られましたが、七澤氏による度重なる改良を経て再度提出され、見事番組で年間最優秀作品に選出されました。この際、楽曲を歌唱したのは弦哲也氏でした。

ヒットと競作

年間最優秀作品に選ばれた後、弦哲也氏のバージョンに加え、北島三郎氏や千昌夫氏など、錚々たる顔ぶれの歌手たちが相次いでシングルをリリースし、激しい競作となりました。中でも、原曲にわずかなアレンジ（歌詞の終盤、与作を連呼する部分の直前に原曲にない楽句が挿入されている点などが挙げられます）を加えた北島三郎氏のバージョンが最も大きな成功を収めました。

こうした競作によってリリースされたレコードの累計売上は、60万枚を超える大ヒットとなり、1979年のオリコン年間シングルランキングでは、第75位にランクインしています。

北島三郎盤（日本クラウン、CW-1720）収録曲

1. 与作
作詞・作曲：七澤公典 / 編曲：池多孝春
2. 風の峠
作詞：南沢純三 / 作曲：関野幾生 / 編曲：福田正

千昌夫盤（ミノルフォン、KA-1144）収録曲

1. 与作
作詞・作曲：七澤公典 / 編曲：薗広昭
2. 雪ん娘峠
作詞：喜多條忠 / 作曲：徳久広司 / 編曲：京建輔

影響と多様な展開

「与作」はその音楽の世界を超えた影響力も持ち合わせています。1981年にはエポック社から家庭用ゲーム機カセットビジョン向けに『きこりの与作』というソフトウェアが発売され、ゲーム内で本楽曲のキャッチーなメロディーがBGMとして使用され、多くのゲームファンにも親しまれました。

さらに、バラクーダによる歌詞の英訳とディスコ調のアレンジが施されたユニークなカバー『ヘイ!ミスターヨサク』が発表されるなど、様々なアーティストによって多岐にわたる形でカバーされ、国内外でそのメロディーが歌い継がれています。

主なカバー例

余天 （『高山慕情』として）
荘学忠 （『高山慕情』として）
徐小明 （広東語版『耕種不驚風雨聲』として）
陳迪匡 （広東語版『我問句天』として）
馮偉棠 （広東語版『衝破萬重浪』として）
麗莎 、趙山 （広東語版『海風寄我情』として）
鄧惠欣 （広東語版『汗造的路』として）
鄭少秋 （広東語版『秋去冬來』として）
少年探偵団 （1979年シングル『恐怖の人間カラオケ』収録）
富士フイルム「写ルンです」CMソング （1997年）
映画『テルマエ・ロマエII』挿入歌・エンディング曲 （2014年）
桑田佳祐 （2019年ライブビデオ『平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦』収録）
* BiSH （2022年）

日本の原風景を思わせる素朴ながらも力強いメロディーラインと、与作という働く庶民像を描いた歌詞は、時代を超えて多くの人々の共感を呼び、「与作」は日本の国民的楽曲として、今なお多くの人に親しまれています。

もう一度検索