世尊寺流

世尊寺流（せそんじりゅう）は、平安時代に活躍した能書家・藤原行成を祖とする和様書道の流派です。小野道風、藤原佐理の流れを汲み、彼らの書風をさらに発展させ、洗練された書体を確立しました。この書風は「世尊寺様」とも呼ばれ、当時の宮廷や貴族社会において最も権威のある書法として尊重されました。

藤原行成は晩年、母方の実家である代明親王の邸宅に隠棲し、その邸宅内に世尊寺を建立しました。その後、その子孫が世尊寺家を名乗り、代々この地を住居としたことから、「世尊寺流」と呼ばれるようになりました。

世尊寺流は、初代・藤原行成から17代にわたりその書風が受け継がれました。しかし、1532年（享禄5年）、17代目である世尊寺行季の死によって世尊寺家は断絶し、その歴史に幕を閉じました。

世尊寺流は、その後の書道界にも大きな影響を与え、多くの書流の基礎となりました。特に、直系とされる主な書流には、尊円流、法性寺流、持明院流などが挙げられます。

また、戦国時代の武将・織田信長の右筆であった楠木正虎は、世尊寺流の流れを汲む書家であったとされています。このように、世尊寺流は、時代を超えて多くの書家に影響を与え、日本の書道史において重要な役割を果たしました。

世尊寺流の書風の特徴は、優美でありながらも力強い筆致にあります。流れるような筆運びと、繊細な線の表現が特徴で、その美しい書体は、多くの人々を魅了しました。また、世尊寺流は、単に美しい書を書くだけでなく、書を通じて人格を磨くことをも重視したと言われています。

このように、世尊寺流は、平安時代から室町時代にかけて、日本の書道界の中心的な存在として、その美しい書風と書道に対する精神が、後世の書道に多大な影響を与えた、歴史的に重要な流派と言えるでしょう。

もう一度検索