尊円流

尊円流は、尊円法親王によって開かれた書道の流派で、青蓮院流、御家流、粟田流とも称されます。この流派は、その実用性から広く普及し、特に武家の公式文書で多く用いられました。そのため、次第に全国のあらゆる階層へと広がり、江戸時代には教育の普及に伴い、寺子屋などで庶民が学ぶ教科書にも尊円流の書が使用されるようになりました。この結果、明治時代に活字文化が普及するまで、尊円流は日本の標準的な書体として広く認識されました。

尊円流は、その隆盛とは裏腹に、傑出した能書家を輩出したという記録はほとんどありません。一休宗純が茶道用の掛物としてこの書体を用いたという事例がわずかに知られている程度です。しかし、その実用性の高さから、江戸時代以前の古文書を読むためには、尊円流の知識が不可欠とされています。その影響力の大きさが伺えます。

尊円流は、16世紀初頭には琉球王国にも伝わったと考えられており、この時期から仮名書きの優れた碑文が多く見られるようになりました。16世紀後半には城間盛久（尊円城間）によって琉球における尊円流が完成され、独自の発展を遂げました。

尊円流の名称は、尊円法親王が世尊寺流から発展させ、創始したことに由来します。青蓮院流という名称は、尊円法親王が青蓮院門跡であったことにちなんでいます。御家流の名称は、尊円法親王の父である伏見天皇が、この書流を見て「今後、汝が家の流儀とせよ」と命じたことに由来します。また、粟田流という名称は、青蓮院が粟田口に位置していたことにちなんでいます。青蓮院に関係する事物には、粟田の名を冠するものが多く見られます（例：粟田焼）。

尊円流は、世尊寺流を親系統としており、そこから多くの派生流派を生み出しました。主な子系統としては、尊朝流（始祖：尊朝法親王）、三条流（始祖：三条西実隆）、宗鑑流（始祖：山崎宗鑑）、伝内流（始祖：建部伝内）、近衛流（始祖：近衛稙家）、素眼流（始祖：金蓮寺の僧素眼）、有栖川流（始祖：霊元天皇）などがあります。また、勅筆流なども含まれます。このように、尊円流は多くの書流に影響を与え、日本の書道史において重要な役割を果たしました。

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