世界のセクシーナイト

世界のセクシーナイト

『世界のセクシーナイト』（原題：Mondo Sexi di Notte）は、1962年にイタリアで製作されたドキュメンタリータッチの映画作品です。当時、世界各地の夜の奇妙な風習や隠された一面を覗き見るというコンセプトで流行した「夜モノ映画」と呼ばれるジャンルの一本に位置づけられます。

しかし、この作品が公開された時期は、夜モノ映画というジャンルが既にそのブームの絶頂期を過ぎ、下火に向かい始めていた頃でした。時代の変化と共に、観客の求める刺激もまた変化しつつあり、初期の夜モノ映画が持っていた人類学的な興味やルポルタージュ的な視点は薄れ、より直接的で扇情的な要素、すなわち「お色気」や性的なニュアンスを持つ見世物を前面に押し出す傾向が強まっていました。本作もまた、そうしたブーム末期におけるジャンルの変質を色濃く反映した作品と言えるでしょう。

映画が映し出すのは、世界各地の夜の街や歓楽街で繰り広げられる、様々なエンターテインメントです。南国の情熱的なリズムに合わせて踊られるサンバ、あるいは異国情緒と退廃的な雰囲気を兼ね備えたベトナム人ダンサーによるストリップパフォーマンス、人間の身体能力の限界に挑むようなアクロバティックなショー、そして観客の好奇心を刺激するエロティックな要素を含んだ多様な見世物や出し物が、次々とスクリーンに登場します。

これらの内容は、単に世界の「夜」を記録したドキュメントとして提示されるのではなく、観客を楽しませるためのショー、つまりエンターテインメントとして強く意識されています。作品に収められたパフォーマンスは、劇場やナイトクラブで行われるような、照明や舞台装置を使った大掛かりなものが多く、その様子は当時の華やかな、あるいはアングラなショーパブやキャバレーの世界を覗き見ているかのような感覚を与えます。知的な探求心を満たすというよりは、視覚的なインパクトと刺激によって、観客を非日常の世界へと引き込むことに重点が置かれているのです。

このことから、『世界のセクシーナイト』は、当時の大人向けの娯楽映画としての側面が非常に強い作品であると評価できます。ブームが下火になった後もなお、観客がお色気や異文化の刺激的な側面に強い関心を寄せていたことを示しており、当時の大衆文化や風俗の一端を知る上で興味深い資料となり得ます。大仰な演出と直接的な描写によって、刺激を求める観客の期待に応えようとした、サービス精神旺盛な一本と言えるでしょう。

本作の製作には、ミノ・ロイが監督として携わりました。映画のムードを作り出す音楽はフランコ・タンポーニが担当。そして、日本での公開版においては、観客を作品の世界へと案内するナレーションを、声優として広く知られる三国一朗が務めています。

『世界のセクシーナイト』は、夜モノ映画というジャンルが、その終焉期に向かう中でいかに大衆的な娯楽性とお色気要素を強めていったかを示す一例であり、当時の大衆が夜のエンターテインメントに何を求めていたのかを垣間見ることができる、刺激に満ちた作品です。

もう一度検索