夜モノ映画

夜モノ映画

「夜モノ映画（よるものえいが）」とは、1960年代前半に生まれた映画の一ジャンルを指します。このジャンルは、後に世界的なブームを巻き起こすことになるモンド映画の源流の一つと見なされており、その前身的な役割を果たしたとされています。

概説

夜モノ映画の主な内容は、お色気要素や様々なステージパフォーマンスを中心に据えたドキュメンタリー映像です。具体的には、欧米各地のナイトクラブで行われるショー、ヴォードヴィル、見世物小屋での出し物、ストリップ、アクロバット、性的なニュアンスを含む風俗など、ステージ上でのエンターテイメントに焦点を当てていました。これらの作品は、観客にとって異文化や非日常を垣間見せる、ある種の「裏観光」的な記録映像としての側面を持っていました。単に低俗なものだけでなく、当時の一流歌手によるパフォーマンスが記録された作品も含まれていました。

このジャンルに関する情報は、例えば洋泉社から出版された書籍「悪趣味洋画劇場」や、1960年代に刊行された夜モノ映画を特集した古書などで詳しく知ることができます。

特に日本においては、「夜シリーズ」と銘打たれた一連の作品がお色気を前面に出した娯楽作品として一定の人気を博しました。しかし、その人気は長続きせず、登場からわずか二年足らずで急速に衰退していきます。これは、同時代に台頭してきたピンク映画や、より過激な内容を含むモンド映画といった新しいジャンルに観客の関心が移ったことが主な要因と考えられています。

夜モノ映画が扱っていたお色気などの要素の一部は、その後隆盛するモンド映画に吸収されていきました。これにより、夜モノ映画は特定の時代におけるドキュメンタリー映画の一潮流として、その役割を終えることとなります。

代表的な作品

夜モノ映画とされる代表的な作品には、以下のようなものが挙げられます。

世界の夜（Il Mondo di Notte, 1959）: このジャンルの記念碑的な作品とされることが多いです。
続・世界の夜（Il Mondo di Notte II, 1961）
ヨーロッパの夜（Europa di Notte, 1959）
アメリカの夜（America di notte, 1961）
セクシーの夜（Sexy al neon, 1962）
世界のセクシーナイト（Mondo Sexi di Notte, 1962）
世界の熱い夜（Mondo Caldo di Notte, 1962）
世界の夜の歴史（Sexy Proibitissimo, 1963）: 通常のステージ撮影とは異なり、スタジオでストリップを見せるという点で異色作として知られています。

関連作品（番外編）

夜モノ映画の系譜に連なる、あるいは関連する作品として、以下のようなものがあります。

ワールド・バイ・ナイトTODAY（Mondo Di Notte Oggi, 1975）: 十数年の時を経て、正統派夜モノジャンルを復活させようとした作品で、ナイトクラブのお色気系エンターテイメントに特化しています。
クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち（Crazy Horse, 2011）: 有名なナイトクラブ「クレイジーホース」を舞台にしたドキュメンタリーで、そのステージと舞台裏に焦点を当てています。
* 地球の皮を剥ぐ（Ecco, This Shocking World, 1963）: 夜モノジャンルの発展型とも見なされますが、お色気よりも奇妙さや残酷なショーを取り上げており、モンド映画として位置づけられることの多い作品です。

これらの作品は、特定の時代の世界の夜のエンターテイメント文化の一端を記録した貴重な資料とも言えます。

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