世界人権会議

世界人権会議

世界人権会議（せかいじんけんかいぎ、英: World Conference on Human Rights）は、国際連合の主催によって1993年6月14日から25日にわたりオーストリアのウィーンで行われた、人権をテーマとする国際会議です。この会議は、冷戦終結後に初めて開催された人権に関する国際的な会議であり、その結果はウィーン宣言および行動計画としてまとめられました。

背景

世界人権会議は1968年にイランで行われた国際人権会議に次ぐ、特に人権に焦点を当てた重要な国際会議となります。この時期、1992年のリオ・デ・ジャネイロでの地球サミットや1994年の国際人口開発会議といった国際大会が続いたことから、各国の参加と政策形成を促進する機運が高まっていました。1989年には人権会議の提案がなされ、冷戦後の国際関係の変化が、国連の活動にも新しい局面をもたらすことが期待されていましたが、準備作業を通じて、国際社会の複雑な立場が浮き彫りとなりました。

特に、国家主権やNGOの役割、人権文書の普遍性について各国が異なる見解を持つことが議論され、代表者たちはさまざまな意見を交わしました。国連総会は1992年に議題を決定せざるを得ず、アムネスティ・インターナショナルの事務局長はこの会議が人権の後退を招くことを懸念し、各国政府が人権に消極的であることを指摘しました。

会議の詳細

世界人権会議には、171か国の代表と800のNGOが参加し、約7000人が集まりました。これは人権に関する会議としては史上最大の規模です。会議の規則では、特定の国での人権侵害について具体的に触れないこととなっており、抽象的な議論に留まりましたが、これは実際の人権侵害が繰り広げられている現場から離れていると多くの参加者が感じたことが影響しています。

特に、ボスニア・ヘルツェゴビナでの紛争が開催地ウィーンと近距離で起きている状況は、会議の非現実性を浮き彫りにしました。一方で、NGOやデモ参加者は会議の場において人権侵害の実情を訴え、一部では表現の自由を求める声も上がりました。

会議では、西側諸国が人権に普遍性を持たせたいとするのに対し、非西洋文化の国々が人権を異なる視点から捉えているという緊張が存在しました。中国、シリア、ラオスなどは、普遍的な人権概念は内政干渉に当たるとの立場を強調し、アメリカの政府はこれに強く反駁しました。

また、女性の権利問題に特に関心を持たれていた議員がアメリカ代表として出席し、またダライ・ラマ14世も発言を行うなど、多様な視点が交わされました。

成果と影響

この会議の成果は、ウィーン宣言および行動計画として1993年に採択されました。当初は「空虚な説教」との評価もありましたが、人権問題に関する共通理解が反映されたものとされています。特に、過去の冷戦の枠組みを超えて、さまざまな権利の相互依存性が強調され、女性、児童、先住民の権利を守るための制度の設立や、国連人権高等弁務官の設置などが求められました。

その後、国連総会はこの宣言を承認し、2000年代前半には合意された施策が実施されていくこととなります。世界人権会議は、NGOの活動の重要性をも再確認させる意味でも、国際的な人権の進展に寄与しました。

もう一度検索