世界競争力報告

世界競争力報告（Global Competitiveness Report、GCR）は、世界経済フォーラムが毎年発行する、各国間の経済競争力を比較・分析する報告書です。2004年以降は、ザビエル・サラ‐イ‐マルティンとエルサ・V・アタディが開発した世界競争力指数（Global Competitiveness Index、GCI）に基づいて、各国をランキングしています。

GCI以前は、マクロ経済的なランキングにはジェフリー・サックスの成長開発指数、ミクロ経済的なランキングにはマイケル・ポーターのビジネス競争力指数が用いられていました。GCIは、これらの指標を統合し、マクロ経済とミクロ経済／ビジネス両面からの競争力を単一の指数で表すことを目指しています。報告書の目的は、国民に高い生活水準を提供できる国の能力を評価することにあります。これは、国がいかに生産的に資源を配分できるかにかかっています。そのため、GCIは、制度、政治、持続可能な経済的繁栄の現状と将来を決定づける要因を総合的に計測する指標となっています。

GCRの特徴として、まず、2004年以降、GCIを用いて各国をランキングしている点が挙げられます。報告書は、最新の理論的・実証的研究に基づいていると主張しています。GCIは、110以上の変数を用いて計算され、その約3分の2は企業経営者のアンケート調査から、残りの3分の1は国連などの公的機関のデータから得られています。これらの変数は、競争力を決定づける重要な分野を表す12の柱に分類されています。

このアンケート調査は、各国を代表する企業経営者を対象としたもので、回答者数は年々増加しており、2010年には142カ国以上で13500人を超えました。報告書では、賃金の上昇傾向や労働生産性の向上など、国の競争力を向上させる要因について論じています。また、生産性を向上させる要因は、国によって異なることも指摘されています。そのため、GCIは、国の経済発展段階を3つの段階に分類しています。

1. 素因駆動段階：未熟練労働力や天然資源などの基本的な要素に依存して競争する段階。企業は価格競争を行い、低賃金と低生産性を反映した製品を販売します。この段階での競争力は、制度、インフラストラクチャー、マクロ経済の安定性、公衆衛生と初等教育に大きく依存します。

2. 効率駆動段階：賃金の上昇に伴い、より効率的な生産工程や品質向上に取り組む段階。この段階での競争力は、高度な教育と職業訓練、効率的な市場（商品市場、労働市場、金融市場）、既存技術の活用能力、国内外市場の規模に依存します。

3. 革新駆動段階：高賃金と高生活水準を維持するために、企業が新規またはユニークな製品を供給して競争する段階。この段階では、洗練された生産工程とイノベーションによる差別化が重要となります。

各段階における競争力に影響する12の柱は以下の通りです。

1. 社会制度
2. 社会基盤
3. マクロ経済の安定性
4. 公衆衛生と初等教育
5. 高等教育と職業訓練
6. 効率的な商品市場
7. 効率的な労働市場
8. 発展した金融市場
9. 既存技術の活用能力
10. 国内外市場の規模
11. 洗練された生産工程
12. 技術革新

GCIの計算においては、各柱に国の1人当たり収入に基づいた重み付けが与えられます。この重み付けは、近年の経済成長を最も良く説明する値に基づいています。例えば、洗練と革新は、素因駆動段階と効率駆動段階では最終スコアに10%の影響しか与えませんが、革新駆動段階では30%の影響を与えます。

GCIは、「ビジネス環境改善指数」や「経済自由度指数」など、経済成長に影響する要因を分析する他の指標と類似していますが、より多くの要因を網羅しています。GCIの計算方法と構造の詳細については、Global Competitiveness Report 2013-2014, Full Data Editionの49-50ページを参照できます。

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