競争力

競争力とは

競争力は、企業や国民経済が市場環境において、製品やサービスを販売・供給する能力を指します。この概念は、経営学、ミクロ[[経済学]]、マクロ[[経済学]]など、分野によって異なる側面を持ちます。

経営学では、競争力は企業が国内または海外市場で、収益を上げながら商品やサービスを展開する能力と定義されます。価格だけでなく、研究開発、立地、サービス、品質など、多岐にわたる要素が競争力を構成します。

価格競争力とは、商品の価格の安さで競争優位に立つ力です。費用を上回る価格で商品を販売し、適切な利益を生み出す能力が重要です。特に標準化された商品を扱う市場で、価格競争力は重視されます。

非価格競争力は、品質、付加価値、サービス、デザイン、納期の信頼性など、価格以外の要素で競争優位に立つ力です。イノベーションによる差別化が重要であり、マーケティングやトレード・マーケティングが重要な手段となります。

ミクロ[[経済学]]では、企業レベルでの競争力が焦点となります。企業が長期的に利益を上げ、競合他社に対して優位な状況を保つことが、競争力がある状態とみなされます。市場での自社の立ち位置を把握し、強みを活かすことが重要です。

マクロ[[経済学]]における国際競争力は、国家や地域、都市などが世界市場で競争する能力を意味します。この概念には、以下の３つの見解が存在します。

この立場では、競争するのは企業であり、国民経済ではないと主張されます。国民経済は、競争に敗れても市場から退場することはないため、国際競争力という概念は幻想であると考えます。貿易はゼロサムゲームではなく、すべての国を豊かにすると捉えられます。

この立場は、国際分業は存在するものの、規模の経済によって有利な専門分野が変化することを指摘します。歴史的に、産業保護政策によって国際競争力を獲得した例や、資源開発による通貨高で産業が衰退した例が挙げられます。産業部門の縮小は、規模の経済のマイナス効果により、長期化する恐れがあります。

この立場では、国際競争力は輸出機会と捉えられます。為替レートや単位労働コストが、価格競争力に影響を与えます。賃金抑制策は、一時的に価格競争力を高めるものの、為替レートの上昇によって効果が打ち消される可能性があります。

現実の世界では、貿易を通じて価格が均衡しているため、価格競争力の評価は困難です。そのため、市場シェアや比較優位指数から潜在的な価格競争力を推定する必要があります。しかし、経済環境が常に変化するため、特定の分野の指標で評価することは不適切であるという反論もあります。

この立場では、国際競争力とは、高い国民所得と生活水準を実現する国家の能力と捉えられます。生産性の伸びとGDPの伸びが指標となります。

国際競争力を評価するための指標として、IMDの「世界競争力年鑑」やWEFの「世界競争力報告」があります。これらの指標は、景気、政府の失敗、市場の失敗、インフラストラクチャー、制度機構、効率性促進要素、高度化要素などを複合的に評価します。

マイケル・ポーターは、国家の競争優位性を決定する要因として、場所の基礎条件、国内市場の需要状況、バリューチェーンの質、企業統治と競争の４つを挙げています。

国際競争力は、輸出企業の相対的な収益性分析としても使われることがあります。

経済政策で「競争力」という用語を使う際には、慎重に再定義する必要があります。各国には、競争力に関する諮問機関や政府機関が存在します。日本では、産業競争力強化法が施行されていますが、為替、賃金、物価、金融、世界市場への関与などを記したものではありません。

歴史的に、日本は国際競争力の欠如を理由にデフレーション政策を志向した時期がありました。プラザ合意以降は、円高により価格競争力が低下しました。バブル崩壊後は、国際競争力の低下が問題視され、製造業の生産拠点が海外に移転しました。

国際競争力の概念は、為替レートを無視しては語れません。輸出競争という考え方も批判されています。貿易はゼロサムゲームではなく、生産性向上が重要です。競争力至上主義は労働者を搾取し、失業率を悪化させる可能性があります。

経常収支は、国際競争力を反映するものではありません。貿易黒字は、国際競争力や市場の閉鎖性を示すものではなく、資本蓄積の結果です。

輸出依存型の経済成長は、人々の幸福につながらない可能性があります。内需主導のサービス経済化による経済成長が望ましいと考えられます。貿易相手国の生産性上昇を自国の国際競争力の低下と捉えることは誤りです。

国際競争力は、グローバル市場での国家や地域、都市などの競争力を意味します。知識（技術・技能）が競争力の源泉であるという考え方もあります。

競争力は、多岐にわたる側面を持つ複雑な概念です。企業レベルだけでなく、国家レベルでも競争力を高めるための様々な取り組みが行われています。国際競争力という言葉を安易に使うのではなく、その意味を深く理解し、政策立案や経済分析に活かすことが重要です。

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