世界自閉症啓発デー

世界自閉症啓発デー

世界自閉症啓発デーは、国際連合が毎年4月2日に定めた国際的な記念日です。この日の主たる目的は、自閉症に対する社会全体の理解を促進し、自閉のある人々が直面する課題や多様な特性について広く知ってもらうことにあります。

制定経緯

この記念日の制定は、カタール国の提案が契機となりました。国際連合の全加盟国からの賛同を得て、2007年12月18日に開催された第76回国連総会本会議において、正式に採択されました（国連総会決議番号62/139）。これにより、自閉症に関する国際的な啓発活動を強化する基盤が築かれました。

世界各地での取り組み

世界自閉症啓発デーである4月2日には、世界中の様々な国や地域で、自閉症への理解を深めるための多彩なイベントや活動が行われます。

象徴的な取り組みの一つとして、2010年に開始された「ライト・イット・アップ・ブルー」キャンペーンがあります。これは自閉症支援団体であるAutism Speaksが提唱したもので、世界各地の著名なランドマークや建築物がシンボルカラーである青色にライトアップされます。青色は、自閉のある人々の心を落ち着かせる効果があるとされる色であり、視覚的に力強いメッセージを発信しています。同年には、この啓発デーを提唱したカタールとイスラエルが共同で主要なイベントを開催するなど、国際協力も進められています。

また、教育機関や図書館などでも関連する取り組みが見られます。例えば、一部の図書館では、自閉症を含む発達障害全体への関心を高めるため、関連書籍の特集展示を行うなど、身近な場所での啓発活動も展開されています。

呼称への批判と「受容」への動き

一方で、「自閉症啓発デー」という名称、あるいは関連する「自閉症啓発月間」といった呼び方に対しては、自閉のある人々の権利擁護を訴える当事者コミュニティやその支持者から、批判的な意見も多く聞かれます。彼らは、「啓発」という言葉が、自閉症を単なる「問題」や「疾患」として捉え、外部からの「教育」や「矯正」の対象とするエイブリズム（障害のある人に対する差別や偏見）につながりかねないと考えています。

こうした背景から、Autistic Self Advocacy Network（ASAN）のような当事者主導の団体は、「自閉受容デー」（Autism Acceptance Day）といった代替の呼称への変更を積極的に呼びかけています。この「受容」という言葉には、自閉症という特性を単に「知る」だけでなく、それを多様な人間性のあり方の一つとして受け入れ、社会的な偏見やスティグマをなくしていこうという、より深い願いが込められています。自閉症に対する社会の姿勢が、「知る」段階から「受け入れ、共に生きる」段階へと進化していくべきだという、当事者からの強いメッセージが込められています。

まとめ

世界自閉症啓発デーは、自閉症への理解を広めるための重要な国際的な機会です。世界各地で多様なイベントが行われ、自閉症に関する社会的な関心を高める役割を果たしています。同時に、呼称を巡る議論は、単なる「啓発」に留まらず、「受容」と多様性の尊重へと社会の意識を変えていくことの重要性を示唆しています。この記念日を通じて、自閉のある人々が自分らしく生きられる、より包容的な社会の実現に向けた対話と行動が促されることが期待されます。

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