並木五瓶

並木五瓶：歌舞伎を彩った名作者の系譜

「並木五瓶」は、歌舞伎における重要な名跡です。代々、多くの傑作を生み出し、歌舞伎の発展に大きく貢献した作者たちの系譜をたどります。

初世 並木五瓶 (1747-1808)

初世並木五瓶は、上方（大坂）で活躍した後、江戸に進出し、歌舞伎界に大きな影響を与えた人物です。若い頃は「五八」「吾八」「呉八」「五兵衛」といった名で活動していましたが、寛政6年(1794年)以降、「五瓶」を名乗るようになりました。浅草堂や並木舎といった雅号も用いていました。

大坂道修町の役木戸和泉屋で生まれた彼は、並木正三（辰岡万作・並木十助とする説も）に入門し、才能を開花させます。大坂の芝居小屋で経験を積み、立作者として活躍しました。その後、三代目澤村宗十郎の招きによって江戸に進出し、都座、市村座で数々の作品を発表しました。

初世五瓶は、上方では複雑で知的な時代物を、江戸では人情味あふれる世話物を得意としました。上方で培った写実的で合理的な作風を江戸歌舞伎に融合させた点が高く評価されており、その作劇技法は後世の作家にも大きな影響を与えました。

代表作

『楼門五三桐』
『五大力恋緘』（五大力）
『江戸砂古慶曾我』
『略三五大切』
『富岡恋山開』（二人新兵衛）
『隅田春妓女容性』（梅の由兵衛）
『傾城黄金鯱』

これらの作品は、初代尾上菊五郎、初代嵐雛助、四代市川團蔵、五代目松本幸四郎といった当時を代表する役者たちによって演じられ、大いに人気を博しました。

二世 並木五瓶 (1768-1819)

二世は、初世篠田金治が襲名しました。武家の出身である彼は、長唄『遅桜手爾葉七字』（橋弁慶）など、音楽面にも才能を発揮しました。

代表作

長唄『遅桜手爾葉七字』（橋弁慶）

三世 並木五瓶 (1789-1855)

三世は、篠田惣六、二代目篠田金次と名乗り、初世篠田金治の門人でした。天保4年(1833年)に三世並木五瓶を襲名しました。代表作に『勧進帳』があります。

代表作

* 『勧進帳』

四世 並木五瓶 (1829-1901)

四世は三世の子で、芝居台帳の収集家として知られています。立作者としては活動しませんでしたが、篠田全治、三代目篠田金治、並木五柳といった名も用いていました。

このように、並木五瓶の名跡は、歌舞伎の歴史において重要な役割を果たした多くの優れた作者たちによって受け継がれてきました。それぞれの時代の流行や観客の嗜好を的確に捉え、時代を超えて愛される作品の数々を生み出した彼らの功績は、現代においても高く評価されています。

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