市村座

市村座の歴史と特徴

市村座（いちむらざ）は、江戸に位置した歌舞伎劇場であり、江戸三座のひとつとして知られています。元々は1634年に村山又三郎によって設立された村山座に起源を持ち、1652年には市村羽左衛門がその興行権を譲り受け、以降は市村座として親しまれるようになりました。この劇場は、最初は日本橋葺屋町に所在していましたが、1842年に火災の影響や改革の影響から浅草猿若町へと移転しました。

江戸時代から明治への転換

江戸時代を経て明治時代に入ると、事情は複雑に変化します。1872年には、当時の経営者である14代羽左衛門の負債によって、村山座と改称されましたが、その後再び市村座として復活します。1892年には下谷二長町に移転し、その後も成長を続けます。

明治の時代には、田村成義が経営権を引き継ぎ、その才能により多くの若手俳優を育成しました。特に六代目尾上菊五郎や初代中村吉右衛門などが活躍し、この期間は「菊吉時代」とも呼ばれました。田村が経営を引き継いだ後、市村座は全盛を迎え、歌舞伎の中心地としての地位を確立しました。

衰退と焼失

しかしながら、田村成義が1920年に亡くなると、看板俳優である吉右衛門の脱退や、その後の経営者である田村寿二郎や岡村柿紅の死去などが重なり、市村座は次第に衰退に向かいます。さらに、関東大震災の影響で焼失し、仮建築による復興がなされましたが、経営は困難を極めました。

1927年には、歌舞伎を代表する俳優の菊五郎に多大な負債がかかり、これが裁判に発展することで松竹が市村座を借り上げる事態となりました。この時期には、四代目河原崎長十郎が新たな劇団前進座を設立し、1931年にはその旗揚げ公演が行われました。

市村座の最期

しかし、市村座の歴史は1932年に楽屋からの失火により焼失してしまい、その後再建されることはありませんでした。この焼失により、寛永時代から続いてきた市村座の長い歴史は幕を閉じました。市村座の存在は、歌舞伎の文化的な遺産として大きな足跡を残し、多くの人々に親しまれてきたことを思い出させます。

まとめ

市村座は、その時代背景とともに日本の文化に大きな影響を与えた劇場でした。今後もその足跡が歌舞伎の舞台で語り継がれ、次世代の俳優たちが新たな時代を創造していくことを期待しています。市村座の歴史は、江戸から明治にかけての日本の文化の変遷を象徴する貴重なものといえるでしょう。

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