中国国鉄前進型蒸気機関車

前進型蒸気機関車

前進型蒸気機関車は、中華人民共和国鉄道部（中国国鉄）が貨物輸送の需要に応えるために開発したテンダー式蒸気機関車です。逼迫する貨物輸送の改善を目的とし、ソ連から輸入したФД形蒸気機関車の標準軌版である「友好型」を参考に設計され、1956年9月に中国で初めて製造された大型機関車です。

概要

当初は大連機車廠で5両が製造され、その後大同機車廠で量産されました。さらに、長春、牡丹江、瀋陽、唐山などの各工場でも製造され、総計4708両が生産されました。当初は「和平型」(HP)と呼ばれていましたが、中ソ関係の悪化に伴い、文化大革命時代に「反帝型」(FD)と改称されました。その後、文化大革命の終了後に現在の「前進型」という名称に落ち着きました。1988年に7207号機が製造されたのを最後に生産は終了しました。

「QJ」は、「前進」の中国語読みである「QIAN JIN」の略称です。

特徴

設計にあたっては、ローラーベアリング、自動給炭装置、鋳鋼製シリンダー、密閉式キャブ、混合式給水暖め器、動力火格子、ブロワーなど、当時の最新技術が数多く採用され、他国の蒸気機関車に匹敵する技術水準に達しました。車軸配置は1E1のサンタフェ形で、最高速度は80km/hです。動輪周馬力が高く、牽引性能に優れており、石炭と水の消費量が少なく、乗務員の労働環境改善にも貢献しました。

しかし、現在では本線上での運用はほとんどなく、数年以内に全車が廃車となり、ディーゼル機関車に置き換えられると予想されています。

改造

1964年には、大同機車廠がボイラーを改良し、燃焼室を追加、中心高を80mm、煙管の長さを5350mmに短縮し、通風装置を改良した結果、エネルギー効率が8.42%向上し、量産型に反映されました。

1986年9月には、大同機車廠が前進型を石炭ガスを燃料とする試作車を製作しました。試運転初期の発表では、燃料のガスが完全燃焼することで石炭の節約になるだけでなく、環境汚染の低減や乗務員の労働条件の改善にもつながるとされていました。しかし、技術的な問題を解決するには至らず、営業運転には使用されませんでした。機関車部分は解体されましたが、炭水車は現在も保存されています。

1980年代半ばからは、南アフリカ国鉄26型蒸気機関車で重要な役割を果たしたデービッド・ウォーデールの協力を得て、ガス化燃焼システム（GPCS: Gas Produce Combustion System）を前進型に搭載する試みが行われました。しかし、保守面や技術的な問題に加え、ディーゼル機関車と電気機関車を主力とする方針に移行したため、開発は中止されました。

保存車両

製造数が多く、比較的近年まで生産されていたことから、アメリカで保存された6988号機や7081号機をはじめ、多くの車両が保存されています。

QJ0001 - 北京市「中国鉄道博物館」
QJ0004 - 同上
QJ101 - 同上
QJ1316 - 遼寧省瀋陽市「瀋陽蒸汽機車博物館」
QJ1997 - 山西省大同市「大同蒸汽機車陳列館」
その他多数

解体された保存車両

* QJ6200 - 兵庫県相生市相生中央公園（2006年解体）

QJ6200は、1982年と1983年に日本で開催された中国鉄道博（1982年は日中国交正常化10周年を記念して横浜市の桜木町駅前、1983年は神戸市と天津市の友好都市提携10周年を記念して神戸市の湊川貨物駅の敷地内）で運転されました。その後、相生市の中央公園で人民型とともに展示されましたが、2006年に解体されました。QJ6200は、中国鉄道博での展示走行のためだけに新造された前進型であり、中国本土を走行した経歴がない唯一の前進型でした。現在は、人民型と共に相生市の中央公園駐車場にて煙室扉と動輪、製造銘板のみがモニュメントとして保存されています。

もう一度検索