中国民航機韓国着陸事件

中国民航機韓国着陸事件

1983年5月5日、中国民航機が韓国でハイジャックされるという衝撃的な事件が発生しました。この事件は、当時の政治情勢や国際関係において重要な意味を持ちました。

事件の概要

事件は、遼寧省の瀋陽東塔空港を出発した旅客機トライデントTr-2Eが、上海に向かう途中でハイジャックされたことから始まります。午前10時45分に離陸した機体は、11時30分頃に武装グループに乗っ取られました。このグループは6名で、ハイジャックの目的は中華民国（台湾）への亡命でした。

ハイジャックの際、操縦士を含む乗員が銃撃され、一部が負傷しました。航空機は北朝鮮の領空を侵犯し、韓国軍の警告を受けた後、江原道春川市にある在韓米軍基地に強制着陸しました。犯人たちは韓国政府に対し、在韓中華民国大使館員の呼び寄せを要求。交渉の結果、乗客は無事解放されましたが、彼らはその後も政治的な亡命を求め続けました。

事件の経過

事件発生の数日後、韓国と中国の間で緊迫した交渉が始まりました。双方ともハイジャック防止条約には署名していたものの、国交がないため、実際の協議は慎重に進められました。中華人民共和国からは、犯人の中国への引き渡しと航空機および乗客の返還が求められました。

韓国政府は、犯人たちを「拉致犯人」として扱い、処置を検討しました。最終的には、韓国側が犯人に対して裁判権を行使することで合意しました。「反共の英雄」とされた犯人たちは、韓国で実刑判決を受けた後、恩赦を受け中華民国へと亡命しました。

その後の展開

事件の結果、韓国政府は国際社会において評価を高め、中国と韓国の関係改善のきっかけとなりました。しかし、犯人たちのその後は波乱に富んでいました。亡命後、彼らは台湾で「六義士」と讃えられましたが、その後の生活は厳しいものでした。卓長仁と姜洪軍は犯罪に走り、最終的には台湾で処刑されました。

事件の影響

このハイジャック事件は東アジアの政治情勢に大きな影響を及ぼしました。当時の中国と北朝鮮の関係、また台湾と韓国の関係に変化をもたらし、後に続く外交交渉や国際関係の構築に寄与したと考えられています。

事件はただのハイジャックに留まらず、それが引き起こす国際的な問題や人々の運命にまで影響を与えるものでした。この事件を契機にして締結された国際協定や、国際社会の反応は、今なお多くの議論を呼んでいます。

もう一度検索