中国語版ウィキペディア

中国語版ウィキペディア

中国語版ウィキペディア（中文維基百科）は、ウィキメディア財団が運営する、中国語（主に標準中国語）で編集されるウィキペディアです。2002年10月に誕生し、2023年現在、140万以上の記事数を誇り、アジア地域では日本語版を凌ぐ規模となっています。

名称の由来

中国語でのウィキペディアの名称「維基百科」は、2003年10月に投票によって決定されました。「維基」は本来、ウィキの音訳ですが、「維」には物体を繋ぐ網、「基」には基礎という意味があり、「人類の知識を繋げる百科事典」という解釈ができます。

コミュニティ

中国語版ウィキペディアは、多様な背景を持つ人々によって支えられています。初期には中国大陸からのアクセスが多かったものの、2015年以降は中国大陸でのアクセスが遮断されているため、台湾や香港など、アクセス制限のない地域からの利用が中心となっています。コミュニティ内では、六四天安門事件や台湾独立運動など、中国に関連する政治的な話題が議論の的となることもあります。

繁体字と簡体字の自動変換

初期の中国語版ウィキペディアは、繁体字と簡体字で記事が分かれていましたが、2005年からはサーバー側の機能により、利用者の設定に応じて文字と用語を自動変換する仕組みが導入されました。これにより、地域による表記の違いを吸収し、記事の共有を促進しています。

利用者は以下の6つの地域に合わせた文体を選択できます。

zh-cn（大陆简体/大陸簡体、中国大陸）
zh-hk（香港繁體/香港繁体、香港）
zh-mo（澳門繁體/澳門繁体、マカオ）
zh-my（大马简体/大馬簡体、マレーシア）
zh-sg（新加坡简体/新加坡簡体、シンガポール）
zh-tw（臺灣正體/台湾正体、台湾）

歴史

中国語版ウィキペディアは2001年5月に設立されましたが、初期は漢字をサポートしておらず、本格的な活動は2002年10月から始まりました。当初は英語版からの翻訳が中心でしたが、徐々に中国語独自のコンテンツが増加していきました。

アクセス遮断

中国本土では、過去に何度もウィキペディアへのアクセスが遮断されています。特に、政治的に敏感な時期や話題に関して、中国政府による検閲が行われることがあります。近年では、中国語版を含む全てのウィキメディア・プロジェクトへのアクセスが規制された状態となっています。

香港国家安全維持法の影

2020年に香港国家安全維持法が施行されて以降、香港人ウィキペディアンは記事の執筆において情報源の確保に苦労するようになり、中国国営メディアの情報源への差し替えや、プロパガンダの流布といった問題も発生しています。また、香港人ウィキペディアンに対する脅迫事件も発生しており、コミュニティに深刻な影響を与えています。

WMCメンバーの追放

2021年9月、ウィキメディア財団は、中国本土のウィキペディア利用者のグループ「Wikimedians of Mainland China」（WMC）に所属するメンバーが、他のウィキペディアンに対する暴力や脅迫を行ったとして、7人を追放、12人の権限を剥奪する処分を行いました。

古代ロシア史関連記事の偽造事件

2022年には、中国語版ウィキペディアに投稿された古代ロシア史に関する記事に、多数の偽造が含まれていることが発覚しました。記事の作成者は、ロシア史に関する知識や経歴を詐称し、虚実ないまぜの情報を拡散していました。

中国語版ウィキペディアは、その規模と影響力から、中国語圏における重要な情報源となっていますが、政治的な圧力やコミュニティ内の対立など、さまざまな課題を抱えています。今後、これらの課題をどのように克服していくかが、中国語版ウィキペディアの発展を左右するでしょう。

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