中在家信号場

中在家信号場：関西本線に存在したスイッチバック式の信号場

三重県亀山市加太中在家地区に位置していた中在家信号場は、西日本旅客鉄道（JR西日本）関西本線に属する信号場でした。加太駅から柘植駅へ向かう線路の途中、標高差が激しい「加太越」と呼ばれる急勾配上に設置されていた点が大きな特徴です。この急勾配に対応するため、中在家信号場はスイッチバック方式を採用していました。

複雑な配線と運用

開業当初、中在家信号場には2本の発着線を備え、列車の交換と待避を同時に行うことが可能でした。しかし、運用方法が独特でした。亀山方面へ向かう列車は、まず本線から引上線に入り、一旦逆走してから発着線へ移動し、対向列車と交換していました。加茂方面へ向かう列車も同様で、発着線で一旦停止し、逆走して引上線で対向列車と交換する仕組みでした。この複雑な配線は、急勾配と限られたスペースの中で列車の運行を円滑に行うための工夫と言えるでしょう。

利用状況の変化と廃止

開業当初は多くの列車が中在家信号場で交換を行っていましたが、時代の変化とともに関西本線の利用状況は変化しました。特に、運行本数の減少は交換の必要性を低下させました。2006年3月のダイヤ改正では、定期列車の交換が廃止され、以降は本線部分の信号機のみが使用される状態が続きました。この時点で、事実上信号場としての機能は限定的になっていました。

その後、2019年、関西線のCTC設備更新と指令所移転を機に、中在家信号場の発着線と引上線、そしてポイントが撤去されました。これにより、信号場としての機能は完全に失われ、同年11月18日、正式に廃止となりました。3月16日には、運転士が使用する乗務行路表からも中在家信号場が削除されています。廃止までに長きにわたって、この地で鉄道運行を支えてきた歴史に幕を閉じました。

周辺環境とアクセス

中在家信号場は、名阪国道や国道25号（旧道）から比較的近い場所にあります。しかしながら、信号場周辺は山間部であり、自動車でのアクセスは困難でした。この地理的な条件も、信号場の運用や維持管理に影響を与えていたと考えられます。

歴史

中在家信号場は1928年（昭和3年）4月1日に開設されました。それから長い間、関西本線の運行に重要な役割を果たしてきましたが、前述の通り、2006年3月18日には交換設備の使用が停止され、棒線信号場となりました。そして、2019年11月18日、指令所の移転に伴い、歴史に幕を閉じました。

まとめ

中在家信号場は、その独特なスイッチバック方式と、利用状況の変化、そして時代の流れの中で廃止に至った歴史を持つ、関西本線において重要な役割を果たした信号場でした。その存在は、日本の鉄道史における、ローカル線における運用や技術革新の一端を示す事例として、記憶にとどめておく必要があるでしょう。周辺の地理的条件や、時代の変化が鉄道施設のあり方に与える影響を改めて考えさせる存在でもありました。

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