中尾敏之

中尾敏之：将棋棋士としての軌跡と第二の人生

中尾敏之氏は、1974年10月24日、静岡県富士市に生まれたプロ将棋棋士です。幼少期から将棋に親しみ、1989年に奨励会に入会。地道な努力を重ね、1998年10月、23歳でプロ棋士となる四段に昇段しました。

プロ入り後は、竜王戦で活躍。第16期と17期竜王戦では、6組から5組、さらに4組へと昇級を果たしました。順位戦では、第60期C級2組で8勝2敗と好成績を収めるものの、C級1組昇級には届きませんでした。その後、順位戦での成績が低迷し、2008年度からはフリークラスに降級。順位戦への出場資格を失うこととなります。フリークラス在籍中は、勝率5割に満たないシーズンが続きました。

しかし、引退が迫った2017年度は一転して好調。朝日杯将棋オープン戦二次予選で、当時A級棋士であった佐藤康光氏と246手の激戦を制するなど、数々の好成績を残しました。特に注目を集めたのは、第31期竜王戦6組ランキング戦での牧野光則氏との対戦。戦後公式戦最長となる420手の持将棋（引き分け）は、翌年の将棋大賞名局賞特別賞を受賞するほどの激闘となりました。この持将棋は、翌日に指し直しが行われ、合計520手にも及ぶ大熱戦となりました。

2017年度は、中尾氏にとって現役棋士として生き残りを懸けた勝負の年でした。フリークラス編入者の昇級規定である「同一年度内に（参加棋戦数<10棋戦>＋8）勝以上、かつ勝率6割以上の成績を挙げる」という条件を達成するためには、最終戦となる棋王戦予選で勝利する必要がありました。しかし、惜しくも敗北。その後、竜王戦でも敗退し、2018年8月13日、現役を引退しました。

中尾氏の棋風は居飛車党で、得意戦法は矢倉。持ち前の粘り強い受けの将棋で知られ、劣勢からの逆転劇も何度も演じてきました。引退後には、地元静岡県沼津市のコーヒー製造メーカーでアルバイトとして勤務。将棋教室を開くことを夢見て、第二の人生を歩み始めました。

中尾氏の将棋人生は、プロ入り後の活躍、順位戦での苦闘、そして引退間際の劇的な戦いまで、ドラマチックな展開を見せています。その粘り強さと、引退後の前向きな姿勢は、多くの人々に感動を与え、将棋界に大きな足跡を残しました。彼の将来の活躍にも期待したいところです。

主な成績
将棋大賞名局賞特別賞（2017年度）：第31期竜王戦6組ランキング戦での牧野光則氏との420手持将棋

昇段履歴
1989年：奨励会入会
1993年：初段
1996年：三段
1998年：四段（プロ入り）
2007年：五段
2018年：引退
2019年：六段（退役棋士昇段規定）

人物・エピソード
趣味は読書とピアノ。
奨励会に弟子を持っていた時期もあった。
* 引退後は地元でアルバイトをしながら、将棋教室を開くことを目標としている。

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