中山研一

中山研一の生涯と業績

中山研一（なかやまけんいち、本名：乾研一）は、1927年1月9日に滋賀県で生まれ、2011年7月31日に大津市で肺癌により亡くなった日本の刑法学者です。彼の学問的探求は主に刑法、特にソビエト刑法に焦点を当てていました。京都大学名誉教授として多くの学生を指導し、長いキャリアを通じて数々の著作を発表しました。

学歴と職歴

中山は、虎姫中学と旧制静岡高校を経て、1953年に京都大学法学部を卒業しました。その後、1955年に同大学の助手に就任、助教授を経て1968年には教授に昇進しました。1982年には名誉教授となり、大阪市立大学法学部に移って教授職を務めます。1990年には北陸大学法学部教授を務め、1998年に退職しました。しかし、退職後も執筆活動を継続し、その意欲は衰えることがありませんでした。

中山は、滝川幸辰や佐伯千仭といった著名な学者の弟子であり、彼らの思想から多大な影響を受けました。

教授としての挑戦

彼の教職生活の中で、特に京都大学での経験は特異でした。大学内では「暗黙の教授会申し合わせ」によって、刑法学の講座を担うことができず、ソビエト法の講義を行っていました。この経験は、後に彼が大阪市大に移る際の大きな要因となったとされています。

自身のブログでは、右翼系の活動や学外でのゼミ形式の講義の必要性について触れながら、特定の学生とトラブルがあったことが刑法の正規講義を妨げた理由であったことを明らかにしています。

学説と思想

中山の刑法学説は、滝川説を起点に、特に佐伯・平野説の影響を強く受けたことを示しています。彼は結果無価値論の立場に立ち、主著『刑法総論』では、当時の通説的立場に対する批判も行いました。さらに、ソ連刑法を研究した経験を生かして、刑法の歴史や理論に関する記述は特にマルクス主義的な視点から強調されることが多く、刑法改正問題についても反対の立場を表明しています。

中山の立場は、現在の国家権力を「悪」と捉える視点から、目指すべき刑事政策のあり方に警戒感を抱き、特に消極的な応報主義的立場を取っていました。彼は犯罪論においても犯罪の成立要件を狭く制限し、刑法の人権保障機能を重視することが求められると主張しました。

主な著作

中山の著作は多岐にわたります。代表作には、1958年の『ソヴェト刑法 その本質と課題』や、1970年の『現代刑法学の課題』、1982年の『刑法総論』などがあり、これらの作品は彼の学説や考え方を理解するための重要な資料です。また、1994年には『刑法入門』を発表し、より広い読者層に向けて刑法の基本を解説しました。

著書としてだけでなく、彼は多数の訳書や共訳書も手がけており、その中にはマルクス主義に関わる法の問題を考察したものも含まれています。これらの業績は彼の學問的独自性を強調し、刑法に関する重要な議論を生み出しました。

最後に

中山研一は、刑法学の研究のみならず、後進の指導や課題の発表を通じて日本の法学界に多大な影響を与えました。彼の功績は、今でも多くの法学者や学生にとって貴重な学びの源となっていることでしょう。

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