中山祐次郎

中山 祐次郎

中山 祐次郎（なかやま ゆうじろう）氏は、1980年に日本で生まれた、医師と小説家という二つの顔を持つ人物です。神奈川県で育ち、その後のキャリアを通じて、医療現場の最前線と文筆活動の両分野で顕著な足跡を残しています。

来歴と学歴

神奈川県に生まれた中山氏は、聖光学院中学校・高等学校で学びました。学生時代には、暗記が苦手で学業、特に試験に強いタイプではなかったと自らを省みています。大学受験では苦戦し、医学部合格までに2年間の浪人を経験、第一志望を含む5校の医学部で不合格となるという経験を経て、鹿児島大学医学部に進学しました。卒業後は、京都大学大学院で公衆衛生学の修士号を、さらに福島県立医科大学大学院で医学博士の学位を取得し、研究者としても研鑽を積んでいます。

医師としての歩み

医師としてのキャリアの中で、中山氏は特に印象的な経験をいくつか積んでいます。2017年には、東日本大震災後に地域医療を支えてきた福島県内の高野病院で、前院長の急逝という事態を受け、臨時院長として勤務しました。福島第一原発から22kmという立地にあるこの病院では、地域医療の存続が危ぶまれる状況下で、外来診療に加え、約100人の入院患者のケアを担当しました。診療放射線技師が不在だったため、レントゲンやCTの撮影を自ら行うなど、本来の専門外の業務もこなさざるを得ない状況でした。この経験を通じて、中山氏は地域医療の重要性と、医師としての使命感を深く再認識したといいます。

キャリアの転換期ともいえる時期もありました。36歳で新しい職場に移った当初、最初の3ヶ月間で担当した手術はわずか1件のみという、外科医としては厳しい状況に置かれます。外科医にとって手術は自己実現の重要な機会であるため、この状態に危機感を抱いた中山氏は、「公平な仕事の分配」に関する提案書を作成し、上司や同僚との対話を通じて状況を改善していきました。その後、手術機会を再び得た中山氏は、ロボット支援手術の技術を習得するなど、技術的な向上にも努め、手術教科書の編集主幹や執筆も手掛けるなど、外科医として確固たる実績を築いていきました。

現在、中山氏は2021年10月から湘南東部総合病院外科に勤務しており、消化器外科、中でも大腸癌を中心とした診療と手術に従事しています。また、湘南医療大学の臨床教授も務めています。臨床現場においては、高齢者などに多く見られるポリファーマシー（多剤併用）の問題にも積極的に取り組み、患者さんの負担軽減に努めるなど、患者中心の医療を実践しています。

作家活動

医師としての経験を基にした文筆活動も、中山氏の重要な一面です。2018年に出版された『医者の本音』で作家としてデビューし、医療現場の知られざる実情や、そこで働く医師たちの偽らざる思いを描き出し、多くの読者の共感を呼びました。翌2019年には、自身初の小説となる『泣くな研修医』を発表。新米医師が直面する葛藤や困難、そして成長過程をリアルに描写したこの作品は、読者からの高い支持を得てシリーズ化され、累計発行部数は64万部を超えるベストセラーとなりました。2021年にはテレビドラマ化もされ、より幅広い層にその存在が知られることとなりました。以降も精力的に執筆活動を続け、『がん外科医の本音』や『俺たちは神じゃない』シリーズなど、医療をテーマにした書籍を多数発表しています。医師としての確かな経験と、それを分かりやすく、あるいは物語として魅力的に伝える筆力は、中山氏の大きな強みとなっています。

医師として日々の診療や手術に真摯に向き合いながら、作家として医療現場の内側を伝える活動を続ける中山祐次郎氏。その多角的な活動は、医療への理解を深め、多くの人々に影響を与えています。

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