中島謙吉

中島 謙吉の生涯と業績

中島 謙吉（なかじま けんきち、1888年 - 1972年）は、主に第二次世界大戦前の時代において活躍した日本の写真家、写真編集者、写真評論家であり、特に日本の芸術写真の発展において重要な役割を果たしました。彼は写真だけでなく美術についても精力的に批評を行い、その活動を通して多くの後進を育てました。著書や雑誌における影響力の大きさから、彼の名は後世に語り継がれています。

生涯の歩み

中島は1922年にアルスという出版社に入社し、当初は雑誌『カメラ』や『芸術写真研究』の編集に従事しました。『カメラ』は1921年に創刊され、主筆には高桑勝雄を迎え、読者との親密な関係を大切にした雑誌でした。『芸術写真研究』は1922年に創刊され、南実が主筆を務め、中島は創刊号から編集に携わりました。特にこの雑誌では、読者から写真作品を募集し、選者として実力ある写真家を発掘しました。その中には高山正隆や山本牧彦など、後に日本光画協会の中心メンバーとなる写真家たちが名を連ねています。

1928年には、光大社という写真専門の出版社を設立し、アルスから独立しました。光大社では『芸術写真研究』の刊行も行うようになり、ベス単派として知られる一派が形成されていくことになります。この流派は、日本における芸術写真の重要な潮流の一つとなりました。さらに、同年に鈴木八郎が設立した表現者写真会などと連携し、表現派としてのスタンスも取り入れました。

主な著作と編集活動

中島は写真関連の著作も数多く残しており、代表作には『写真芸術の表現』（1922年）、『引伸写真術』（1923年）、『芸術写真の知識』（1929年）、『引伸写真入門』（1932年・高山正隆との共著）、さらに『ヴェス単の使ひ方』（1933年）、『ヴェス単パーレットの使ひ方』（1938年）などがあります。また、1958年には『宮岡貞三郎写真画集第一集』を編纂し、写真芸術の普及にも貢献しました。

さらに、アルスの写真年鑑の編集にも携わり、1927年から1928年にかけて刊行された『アルス写真大講座』（全14巻）にも寄稿しました。特に、中島は彫刻家である石井鶴三の随筆集『凸凹のおばけ』を編集しており、彼との密接な関係が伺えます。この随筆集は1943年に改訂増補版として刊行され、特別な関係があったことが影響を及ぼしました。

時代背景と影響

中島の活動する時代、日本の芸術写真はその発展期を迎え、彼の貢献により多くのアーティストが道を切り開かれていきました。彼の雑誌や著作を通じて、写真の奥深さや芸術的価値が広まり、リーダーシップを発揮して日本の写真界を牽引しました。彼自身が直接指導したわけではないものの、多くの写真家たちの成長を後押しし、彼らはその後の日本写真界で重要な位置を占めるようになります。

1941年には戦時下の事情により『芸術写真研究』はアサヒカメラに吸収され、事実上その姿を消すこととなりましたが、光大社は戦後も運営を続け、彼の影響力は色あせることなく後に受け継がれることになります。なお、同姓同名の別人である中島謙吉（1904年没）は明治期の軍事書の編集者であり、本項の中島とは異なる人物です。彼の業績は日本の写真界において大きな足跡を残し、多くの後進に影響を与えました。

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