石井鶴三

石井 鶴三（いしい つるぞう）

石井鶴三（1887年6月5日 - 1973年3月17日）は、日本の著名な彫刻家、版画家、洋画家として知られています。彼の出生地は東京府下谷区仲御徒士町（現・台東区上野）で、画家鈴木鵞湖の孫にあたります。父は同じく画家の石井鼎湖であり、兄弟には画家の石井柏亭がいます。

商業的な活動を通じて、鶴三は早くから芸術活動を開始しました。彼は洋画を不同舎で小山正太郎に、また木彫を加藤景雲に学びました。1905年には、雑誌『平旦』にウィリアム・ニコルソンの作品を模倣した自刻による木版画『虎』が掲載されました。

1910年には彫刻を学ぶため東京美術学校を卒業し、翌年には文展で「荒川岳」が入賞を果たします。その後、1915年に日本美術院研究所に入所し、各種の展覧会に多くの作品を出品しました。特に、1916年には「行路病者」で二科賞を受賞し、知名度を高めました。彼は明治末から山本鼎との交流を深め、創作版画における先駆者としても広く知られるようになりました。

1918年には日本創作版画協会を設立し、1919年と1920年にはそれぞれ『日本風景版画集』の第9集（東京近郊）および第10集（日本アルプス）を発表しました。その後、日本版画協会の会長および理事長を務め、日本水彩画にも関与しました。1924年には日本創作版画協会と春陽会の会員となり、その活動に注力しました。

文学やイラストレーションでも著作があり、中里介山の『大菩薩峠』や吉川英治の『宮本武蔵』の挿絵を手がけ、その名を広めました。1944年には東京美術学校の教授に就任し、1950年には日本芸術院の会員に選ばれました。1963年には東京芸術大学名誉教授となり、1967年には勲三等旭日中綬章を受章しました。

鶴三はまた、文筆活動にも積極的で、全集や書簡集、日記など多岐にわたる著作が刊行されています。特に、長野県上田市の小県上田教育会館の2階に彼の作品を集めた「石井鶴三美術資料室」が設置されています。

彼の人柄を物語るエピソードには、1925年に平櫛田中の子供が亡くなった際に、新聞社からの挿絵代金を無償で平櫛へ寄付した出来事があります。鶴三は相撲好きであり、自宅に土俵を造るほどの情熱を持ち、1950年には横綱審議委員会の委員となり、さらに1969年からは相撲博物館の館長も務めました。彼は73歳で心臓病により亡くなるまで、精力的に活動を続けました。

1973年3月17日、鶴三は自宅で亡くなりました。彼の墓は護国寺共同墓地にあり、法号はないと言われています。彼の作品や業績は、現在も多くの人々に評価され続けています。

もう一度検索