中島郡

尾張国中島郡：古代から近世までの歴史

尾張国に存在した中島郡は、その歴史的変遷において、古代からの地名や、近世における木曽川の大洪水による国境変更といった、興味深い出来事を数多く経験しました。本稿では、美濃国中島郡との分割以前の歴史に焦点を当て、その詳細を解説します。

古代の中島郡：地形と神への奉納

中島郡の郡名は、古代の地形に由来すると言われています。別表記として「中嶋郡」も用いられていました。歴史書『太神宮諸雑事記第一』には、垂仁天皇の時代に尾張国造が中島郡一帯を「中島神戸」として伊勢神宮に寄進したとの記述があります。これは、中島郡が古代において重要な地域であったことを示唆しています。

927年に編纂された『延喜式』にも「中嶋郡」の記載があり、当時既に郡として確立されていたことが分かります。また、938年頃成立の『和名類聚抄』には、中島郡に属する郷が複数記録されています。これらの郷は、地域の社会構造や経済活動を知る上で重要な手がかりとなります。具体的には、美和、神戸、拜師、小塞、三宅、茜部、石作、日野、川埼といった郷の存在が確認できます。

さらに『延喜式』神名帳には、中島郡内に鎮座する式内社が複数記載されており、古代における信仰や祭祀の様子を垣間見ることができます。

中世以降：木曽川の氾濫と郡の分割

1586年、木曽川の大洪水が中島郡の歴史に大きな転換をもたらしました。この大洪水により、木曽川の流れが変わり、郡域の中央を流れるようになりました。それまで尾張国と美濃国の境となっていた木曽川は、郡域を分断する形になったのです。

豊臣秀吉は、この状況を踏まえ、1589年に新しい木曽川を尾張国と美濃国の境界線と定めました。結果として、中島郡は尾張国と美濃国の両国にまたがる郡となりました。

明治時代に入ると、1878年（明治11年）の郡区町村編制法施行により、中島郡は分割されました。尾張国に属する区域は愛知県中島郡、美濃国に属する区域は岐阜県中島郡として、それぞれ新たな行政区画として発足したのです。これは、現代の行政区画へと繋がる重要な出来事でした。

まとめ：歴史的変遷と現代へのつながり

古代からの歴史を有する尾張国中島郡は、伊勢神宮への寄進、郷の成立、そして木曽川の大洪水による国境変更といった、幾多の変遷を経てきました。これらの出来事は、中島郡という地域が、時代とともに変容し、発展してきたことを示しています。そして、郡区町村編制法による分割は、現代の愛知県中島郡と岐阜県中島郡という行政区画へと続く、重要な歴史的転換点となったのです。 中島郡の歴史を紐解くことは、地域の成り立ちを理解し、現代に繋がる歴史的背景を学ぶ上で非常に有益と言えるでしょう。 今後の研究においては、郷の具体的な位置や、式内社の詳細な調査など、更なる歴史的解明が期待されます。

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