中平卓馬

中平 卓馬について

中平 卓馬（なかひら たくま、1938年7月6日 - 2015年9月1日）は、日本を代表する写真家であり、写真評論家としても活躍した。彼の作品は、時代を超えて人々に影響を与え続けている。東京の原宿に生まれた中平は、父が書道家であった影響を受け、学問と芸術に親しむ環境で育った。東京都立小山台高等学校を経て、東京外国語大学のスペイン語学科を卒業し、学問の道を歩むが、文章から写真の世界へと進んでいく。

経歴と初期の作品

中平は、1963年に大学を卒業した同年、現代評論社の雑誌『現代の眼』の編集部に加わり、そこで「柚木明」としても作品を発表していた。1965年には編集部を退社し、写真家の道を歩み、東松照明や寺山修司といった著名人と交流した。特に1968年には、写真同人誌『Provoke』を創刊し、その後1970年までの彼の作品は、「アレ、ブレ、ボケ」と称されるスタイルで知られることとなった。このスタイルは、荒い画面、手ブレ、被写体のピント外れなどを特徴とし、当時の日本写真界に新たな風を吹き込んだ。

スタイルの変化と新たな挑戦

1973年に発表した『なぜ、植物図鑑か』では、これまでのスタイルを一新し、撮影者の情緒を排したカタログ風の写真を目指すなど、そのアプローチに変化が見られる。この作品により、彼は単なる芸術家から思想を持つ写真家へと進化していく。更に、1977年には酔いつぶれた際に昏睡状態に陥る事件が起こり、その結果、言語能力や記憶に障害を残すこととなったが、1979年に『アサヒカメラ』に「沖縄－写真原点I」を発表し、復活を果たす。

影響と作品の評価

中平の作品は、特に1980年代から1990年代にかけて、再び注目を浴びるようになった。1983年には「新たなる凝視」を発表し、1989年には『ADIEU A X』で第2回写真の会賞を受賞。これらの作品を通じて、彼は日本の写真界における重要な位置づけを確立した。また、近年では2015年に肺炎で逝去し、彼の没後初の企画展が東京国立近代美術館にて開催される予定があるなど、その影響力は現在でも健在だ。

中平卓馬の遺産

彼の作品は、時代を超えて観る人たちに深い印象を与え、特に作家の辺見庸による評価がその一例である。辺見は中平の作品について、「その比類ない映像はほぼ三十年近くも私の胸の中に着床したままだ」と記しており、彼が持つ独自の視点と姿勢が多くの人々に感銘を与えたことが伺える。中平の探求心は、彼自身の作品のみならず、未来の写真を担う次世代の作家たちにも広がりを持つものといえる。

中平卓馬は、ただの写真家ではなく、時代を超えた視覚的な探求者として、我々にその足跡を残した。彼の作品と思想は、今後も多くの人々に引き継がれていくに違いない。

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