中断された音楽の稽古

中断された音楽の稽古

『中断された音楽の稽古』（ちゅうだんされたおんがくのけいこ、英: Girl Interrupted at Her Music）は、17世紀オランダの画家ヨハネス・フェルメールによって1658年から1659年ごろに描かれた油彩作品です。この絵は、音楽の練習やデュエットの合間に楽譜または手紙に没頭している恋人たちを描写しています。現在、この作品はニューヨークのフリック・コレクションに所蔵されており、フェルメールの作品のひとつとして文化的価値が認識されています。

作品の特徴

この絵の中心には音楽のレッスンをしている男女が描かれていますが、彼らは情景に気を取られたかのように、一瞬観覧者へ視線を向けています。女性は赤い衣服を着て、その帽子は白いリンネルで作られています。彼女は両手で楽譜を保持しておりながら、観覧者に目を向けます。この仕草は鑑賞者に対する申し訳なさをにじませているようにも映ります。一方、男性は彼女の仕草に気づいておらず、楽譜に熱心に目を奪われています。二人の関係は、壁に掛けられた愛の神キューピッドの絵により、象徴的に強調されています。

テーブルの上には楽譜や撥弦楽器のシターン、陶器の水差し、赤ワインが注がれたグラスが配置されていますが、特にこの作品は保存状態が良好ではなく、摩耗や後代の加筆が見受けられます。キューピッドの絵は1907年の修復までは上塗りで覆われていました。

窓と光

泣く間にもフェルメールの特徴的な要素として、窓から入る光があります。この光の描写は作品全体に穏やかな印象を与え、鑑賞者にその美しさを伝えます。窓は四角形、円形、半円形が組み合わさった複雑なデザインを持ち、フェルメールはこのデザインを他の作品でも繰り返し使用しています。フィリップ・ デ・ ムールによると、本作品の窓ガラスの透明感は特筆に値します。

若い恋人たち

男女は音楽の演奏に積極的に取り組んでいるわけではなく、テーブルに置かれた楽譜やシターンからは、流行りのテーマが扱われていることが伺えます。しかし、この作品の特徴は、女性が鑑賞者の視線に一瞬注意を向けている点です。これは当時の王政を反映した象徴的な意味にも関連している可能性があります。女性の姿勢は、フェルメールの『ワイングラスを持つ娘』と似ており、鑑賞者を絵画の世界に引き込む役割を果たしています。

キューピッドの絵画

背景にはキューピッドを描いた絵画が掛けられており、フェルメールが愛と音楽の相関関係を強調するための装飾的手法として使用されています。この作品のキューピッドは、若い恋人たちへの警告の要素を持つとも言われています。特に、道徳的なメッセージや象徴性を強化するための装飾として機能しています。

陶器の水差しと鳥かご

テーブルには、青色の装飾が施された陶器の水差しや赤ワインのグラスが見えます。陶器の様式については様々な解釈がありますが、中国製やデルフトの陶器とする意見があります。また、画面の左隅には鳥かごが描かれていますが、これについては後代の加筆とされ、当初の意図とは異なる解釈がなされることが多いです。

来歴

この作品は、19世紀にアムステルダムの商人のコレクションの一部として知られており、所有者の死後にフェルメールの作品として認識されました。その後、数回の所有者を経て、フリック・コレクションに至ります。

影響

フェルメールの作品は当時の他の画家たちにも影響を与え、特にコルネリス・デ・マンは本作の要素を取り入れ、彼の作品に反映させています。

このように、『中断された音楽の稽古』は、フェルメールが描いた恋愛と音楽の間の複雑な関係を象徴的に表現した作品であり、今もなお多くの人々に愛されています。

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