中村安次郎

中村安次郎は、1889年（明治22年）に東京府東京市小石川区竹早町（現在の東京都文京区小石川）で、中村清一の三男として生を受けました。彼は、第一高等学校を経て、1916年（大正5年）に東京帝国大学法科大学法律学科を卒業し、そのキャリアをスタートさせました。当初は三井銀行に勤務しましたが、その後、内務省に入省し、官僚としての道を歩み始めます。

内務省では、京都府属を皮切りに、京都府警視、同理事官、内務省警保局事務官など、様々な役職を歴任しました。その後、地方官として石川県、新潟県、秋田県、高知県、茨城県で書記官や警察部長、内務部長を歴任し、その行政手腕を発揮しました。これらの経験を通じて、彼は地方行政に関する深い知識と経験を培いました。

1936年（昭和11年）4月には、鹿児島県知事に就任します。鹿児島県知事時代には、農林省獣疫調査所の誘致、牝馬育成所の設置に尽力するなど、県内の産業振興に貢献しました。また、屋久島の電源開発調査に着手するなど、インフラ整備にも取り組みました。これらの業績は、彼の行政官としての高い能力を示すものです。

1938年（昭和13年）6月には、新潟県知事に転任しましたが、在任中の1939年（昭和14年）8月27日に病のため死去しました。享年50歳でした。

中村安次郎は、その功績により、数々の栄典を授与されています。1933年（昭和8年）には勲六等瑞宝章、1936年（昭和11年）には正五位、勲五等瑞宝章、勲四等瑞宝章、1938年（昭和13年）には勲三等瑞宝章、そして死後の1939年（昭和14年）には従四位、正四位を贈られています。これらの栄典は、彼が国や地域に貢献した証と言えるでしょう。

彼の足跡は、『中村安次郎君追想録』にまとめられ、後世に伝えられています。また、『新編日本の歴代知事』や『日本官僚制総合事典』などの文献にも、彼の名前を見ることができます。これらの資料は、彼の生涯と業績を理解する上で貴重な情報源となっています。

中村安次郎は、激動の時代を駆け抜けた官僚として、その高い能力と誠実な人柄で多くの人々に尊敬されました。彼の生涯は、日本の近代史における地方行政の重要性と、それを担った人々の努力を物語るものと言えるでしょう。

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