中村徳也

中村 徳也の生涯と業績

中村徳也（なかむら とくや、1895年6月10日 - 1939年10月28日）は、秋田県出身の著名な歌人であり、短歌や俳句の創作に生涯をささげた。

幼少期と学びの時期

秋田県五十目村（現在の五城目町）で生まれた徳也は、1910年に五城目小学校高等科を卒業後、秋田市の石田病院で薬剤師の見習いとして働き始めた。仕事の傍ら、彼は夜に簿記学校に通い、将来自身の薬店を開業する準備を重ねていた。この頃すでに、地元の新聞「秋田魁新報」の歌壇には彼の投稿作品が掲載され、地元では若手の歌人として名を知られるようになっていった。

文芸との出会い

1912年頃、石田病院の隣に館岡栗山という同郷の病人が入院する。栗山も文芸に興味を持っており、二人は文芸についての活発な会話を交わすようになる。さらに、県立図書館へ通うことで、さまざまな歌集や歌論に触れ、歌作りに励む日々を送った。徳也は詩の世界に深く傾倒していった。

薬店開業と短歌会の創設

24歳で五城目町に帰郷した徳也は、自宅で薬店を開業し、商売の傍ら「五城目短歌会」を発足させてその指導者としての役割を果たした。館岡栗山も弟子として参加し、彼に一枝の号を授けるなど、徳也は多くの仲間と共に短歌の道を切り拓いた。栗山は俳句にも興味を示し、徳也を誘って地元の句会に参加することとなる。徳也はそこで「杏花」という俳号での投句も行い、俳句の世界にも積極的に関与していった。

歌壇での名声

昭和時代に入ると、秋田県の歌壇では特に中村徳也、大黒富治、越後策三といった詩人が際立った存在となる。彼らは正岡子規が主宰する『アララギ』に参加し、相互に切磋琢磨して秋田の歌壇を盛り上げていった。徳也は『アララギ』の中心メンバーであり、歌誌『現実短歌』でも高い評価を受けた。また、県内外の多くの歌誌にも作品を投稿し、徐々に秋田を代表する歌人としての地位を確立していった。1935年には「短歌新聞」の秋田県取り次ぎ所の担当者となり、短歌の情報発信にも尽力した。

私生活と遺された作品

1922年に結婚した徳也は、1936年には不治の病にかかり病床につくこととなる。自身が薬店で扱う薬が効かないという皮肉を抱えながら、彼は病床日記を書き残し、多くの短歌を詠み続けた。1939年、45歳でこの世を去った。彼に捧げられた歌集『中村徳也歌集』は、1964年に館岡栗山による装丁で出版され、その後も多くの人々に影響を与え続けている。彼の作品は、秋田の文化遺産として大切にされている。

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