アララギ

『アララギ』の歴史と影響

『アララギ』は、日本の短歌を代表する結社誌として知られており、1908年に創刊されました。その起源は、1903年に結成された根岸短歌会の機関誌『馬酔木』に遡ることができます。歌人たちの交流や新たな試みが生まれたこの会から、伊藤左千夫や蕨真一郎などが中心となり、『阿羅々木』を名乗ってスタートしました。その後、1914年には島木赤彦による『比牟呂』と合併し、現在の『アララギ』としての形が確立されました。

編集体制とその課題

当初の編集は左千夫のもとに古泉千樫、斎藤茂吉、石原純らが交替で行っていましたが、千樫の体制下では発行の遅れや休刊が続くという問題が浮上しました。1913年には、その状況が深刻化し、茂吉を中心とした内部分裂が起こり、一時は廃刊の危機に見舞われました。茂吉は赤彦に助けを求め、その結果として編集体制に変化が生じました。1914年からは岩波書店との提携が始まり、赤彦の指導のもと、短歌誌としての質や影響力が向上していきました。

新たな方向性の模索

1915年に赤彦が編集発行人となり、彼は会員の増強や新しいプロジェクトを立ち上げることで、雑誌の活性化に尽力しました。茂吉の第一歌集『赤光』は特に注目を集め、『アララギ』の名声を高める要因こちらとして重要な役割を果たしました。長期にわたる堅実な写生主義が引き継がれるものの、形式化が進み、次第に新たな表現方法や視点が求められました。

1924年には千樫や石原純らが脱退し、北原白秋や前田夕暮らと共に新たな短歌誌『日光』を創刊するなど、内部での動きは活発化しました。

戦後の展開

戦後には、茂吉門下の佐藤佐太郎による『歩道』や、土屋文明から派生した『未来』、岡井隆らが関与する『塔』といった新たな短歌誌が次々と創刊され、『アララギ』本誌は相対的に影響力を落としていきました。1993年には小市巳世司が編集発行人に就任しましたが、1997年には終刊に至りました。

この終刊に伴い、同人たちは短歌誌の新しい創刊に乗り出し、結果的に『新アララギ』や『短歌21世紀』などの複数の結社が誕生しました。こうした動きは、『アララギ派』という新たな枠組みを生むきっかけとなり、アララギ系の結社はその後も短歌界の主要な勢力として存在し続けています。

アララギ派の特徴

『アララギ派』と呼ばれる歌人たちは正岡子規の短歌論を信奉し、写実性や生活密着をテーマにした歌風が特徴です。これにより近代的な人間の心理に迫る知的な解釈が求められ、広範な影響を及ぼしました。また、その系譜を引く結社には『新アララギ』や『未来』などの有力な団体が存在し、全国各地に多くの地方結社も形成されています。

美術と文化活動の役割

『アララギ』は、美術作品の紹介にも力を入れていました。特に昭和10年代には、斎藤茂吉が収集したヨーロッパの美術作品を表紙に使用し、その解説も行っていました。このことから、アララギは短歌だけでなく、美術の発信源としても重要な役割を果たしました。

結論

『アララギ』の影響は、単なる短歌誌の枠を超え、文化全体に深く根ざしたものとなっています。その歴史を通じて、短歌の新しい表現や視点の模索が続けられてきたことは、現代においても重要な意義を持っています。

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