中村歌六

中村歌六（なかむら かろく）

中村歌六は、歌舞伎役者の名跡であり、その歴史は江戸時代後期にまで遡ります。屋号は播磨屋ですが、五代目の時代には一時的に萬屋を名乗っていた時期もあります。定紋は播磨屋の時は揚羽蝶、萬屋の時は桐蝶を使用し、替紋として蔓片喰を用いています。

初代 中村歌六

初代中村歌六は、大坂の三井の番頭であった丹波甚助の子として生まれ、播磨屋作兵衛の養子となりました。1779年から1859年まで生きた初代は、三代目中村歌右衛門の門下に入り、上方歌舞伎において卓越した女形として名を馳せました。初めは初代中村もしほを名乗り、後に初代中村歌六を襲名しました。

二代目 中村歌六

二代目中村歌六は、初代の次男として生まれましたが、生年は不明で1891年に亡くなりました。彼は初代中村種太郎から二代目中村もしほ、そして二代目中村歌六へと名を改め、最終的には二代目坂東志うか（大和屋）となりました。この変遷は、当時の歌舞伎役者の名前の移り変わりを示す一例です。

三代目 中村歌六

三代目中村歌六は、初代の三男として1849年に生まれ、1919年に亡くなりました。彼は現在の播磨屋系各家の祖とされています。初代中村米吉から初代中村梅枝、そして初代中村時蔵を経て、三代目中村歌六を襲名しました。彼の存在は、播磨屋一門の系譜において非常に重要な位置を占めています。

贈四代目 中村歌六

贈四代目中村歌六は、三代目の次男である三代目中村時蔵の長男として1925年に生まれ、1973年に亡くなりました。彼は役者として舞台に立つことができなくなり、廃業した後は脚本家として名をあげました。彼の死後8年目に、その功績を称えて「四代目中村歌六」が追贈されました。彼は三代目中村種太郎から二代目中村歌昇、そして小川貴智雄を経て、贈四代目中村歌六となりました。この追贈は、歌舞伎界における特別な名誉を示すものです。

五代目 中村歌六

五代目中村歌六は、四代目の長男として1950年に生まれました。彼は四代目中村米吉を経て、五代目中村歌六を襲名しました。五代目は、重要無形文化財「歌舞伎脇役」の各個認定保持者、いわゆる人間国宝として、その卓越した技能が広く認められています。彼の活躍は、現代の歌舞伎界において重要な役割を果たしています。

中村歌六の名跡は、それぞれの時代において、歌舞伎の歴史を彩る重要な役割を担ってきました。それぞれの歌六が持つ個性が、歌舞伎の奥深さを形作っていると言えるでしょう。

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