中村由行

中村 由行

中村 由行（なかむら よしゆき）氏は、1955年に広島県で生まれた日本の環境学者です。現在は横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院の教授を務めており、それ以前は港湾空港技術研究所で研究主監として活躍しました。特に、有害化学物質で汚染された海底や河川底の土砂（底質）に関する専門家として知られ、汚染対策マニュアルの策定などに貢献しました。また、底質汚染をはじめとする環境問題に関わる数多くの国の委員会や地方自治体の検討会で委員長を務め、専門的見地から国の政策策定や地域の具体的な課題解決を主導しています。

経歴

中村氏は、1979年に東京大学工学部化学工学科を卒業しました。その後、同大学院に進学し、1984年に博士課程を単位取得の上退学します。同年、長岡技術科学大学工学部助手に着任し、研究者としてのキャリアをスタートさせました。1989年には、「沿岸生態系におよぼす密度成層の影響」に関する論文により、東京大学から博士（工学）の学位を取得しました（論文博士）。

1992年には九州大学工学部に助教授として転じ、教育・研究活動に従事しました。1999年には運輸省港湾技術研究所海洋環境部海水浄化研究室長に転任し、港湾域の環境問題研究に深く関わるようになります。組織改編に伴い、2001年には独立行政法人港湾空港技術研究所海洋・水工部沿岸生態研究室長沿岸環境領域長となり、2008年には同研究所の研究主監に昇任しました。長年にわたる港湾・沿岸環境分野での研究実績と貢献が認められ、2013年からは横浜国立大学の教授として、後進の指導と研究に邁進しています。

主な研究分野と貢献

中村氏の研究は、沿岸域や港湾域における環境問題、特に底質汚染や富栄養化に関するものが中心です。有害化学物質による底質汚染の実態解明、将来予測手法の開発、生物や生態系への影響評価に関する研究を精力的に行っています。また、そうした汚染された底質に対する具体的な対策技術の開発や、そのためのマニュアル作成にも大きく貢献しました。さらに、水質改善技術や生態系手法を取り入れた港湾計画の策定手法など、環境と調和した沿岸域の利用に関する研究も行っています。

社会貢献活動

研究活動に加えて、中村氏は社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。特に、専門知識を活かして様々な委員会の委員を務めており、その多くで委員長として重要な役割を果たしています。例えば、普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会（防衛省）、底質ダイオキシン類対策技術検討委員会（国土交通省）、港湾における底質ダイオキシン類対策検討委員会（国土交通省）、横十間川底質関連対策検討会（東京都）、古綾瀬川底質対策検討委員（埼玉県）などで委員や委員長を務め、国の重要事業や地域の環境課題解決に貢献しています。また、底質環境に関するシンポジウムなどで講演を行い、研究成果や知見の普及啓発にも努めています。

受賞歴

中村氏は、共同研究の成果に対して複数の著名な賞を受賞しています。主なものとしては以下の通りです。

2001年：土木学会「土木学会論文賞」（「越波エネルギーを利用したダム湖・貯水池の水質改善システムに関する研究」に対して）
2002年：文部科学省「文部科学大臣賞研究功績者表彰」（「富栄養化水域における環境修復技術の開発に関する研究」に対して）
2007年：土木学会「環境工学論文賞」（「港湾域の底泥中化学物質濃度と底生生物叢の関係」に対して）
2008年：土木学会「土木学会論文賞」（「港湾域における有機スズ化合物の存在特性と水中回帰に関する現地調査」に対して）
* 2008年：日本港湾協会「日本港湾協会技術賞」（「生態系手法を取り入れた港湾計画の策定手法に関する研究」に対して）

これらの受賞は、水質改善、環境修復、底質汚染物質の動態解明、生態系に配慮した港湾整備など、多岐にわたる環境研究における中村氏および共同研究者の功績を称えるものです。

著作

中村氏は、研究成果を学術論文や著作として発表しています。主な著作として、共著書に『貧酸素水塊 - 現状と対策』（山室真澄、石飛裕、中田喜三郎との共著、生物研究社、2013年）があります。また、博士論文として『沿岸生態系におよぼす密度成層の影響』（1989年）を執筆しました。その他、多数の学術論文や科研費報告書を発表しており、それらはCiNiiなどのデータベースで確認することができます。

長年にわたり環境問題、特に水域の底質汚染問題の解決に向けて研究と社会活動を続けてきた中村氏の功績は、日本の環境保全において重要な位置を占めています。今後の研究や教育活動を通じて、さらなる環境改善への貢献が期待されます。

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