中村福助 (成駒屋5代目)

五代目中村福助：歌舞伎界を彩った美貌の役者

五代目中村福助（1900-1933）は、明治から昭和初期にかけて活躍した歌舞伎役者です。端麗な容姿と気品に満ちた芸風で人気を博し、多くの観客を魅了しました。その華麗なる生涯と、歌舞伎史における功績を紐解いていきましょう。

華麗なるデビューと活躍

1900年、東京築地で中村歌右衛門の長男として生まれた福助は、4歳の時に二代目中村兒太郎を襲名し、初舞台を踏みます。その後、1916年には五代目中村福助を襲名。初代中村吉右衛門との共演も多く、若手ながら確かな実力と人気を誇りました。その美貌と気品あふれる演技は、観客の心を掴んで離しませんでした。

特に『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子、『春興鏡獅子』の女小姓・弥生、『妹背山婦女庭訓』の雛鳥など、数々の当たり役を演じ、その芸の幅広さを示しました。若手ながら、次代を担う花形役者として、将来への期待は大きく膨らんでいました。

家庭と舞台、充実した日々

私生活では、1925年に大阪宗右衛門町の新大和屋の梅弥と結婚。1928年には実子も生まれ、家庭と舞台の両立を果たしていました。さらに、大正10年からは自主公演の羽衣会を主宰し、舞踊活動の充実にも力を注ぎました。順風満帆な日々を送っていたかに見えた福助でしたが、昭和8年3月の歌舞伎座公演を最後に病に倒れてしまいます。

早すぎる死と、その後

惜しくも昭和8年（1933年）8月11日、神奈川県葉山の別荘で腹膜炎と胸病を併発し、33歳の若さでこの世を去りました。その死は、歌舞伎界に大きな衝撃を与えました。

名家の系譜

福助は、歌舞伎界の名家・中村家に生まれたという恵まれた環境にありました。弟には六代目中村歌右衛門がおり、その血筋は現在まで続いています。七代目中村芝翫は福助の長男、八代目中村芝翫は孫にあたります。さらに、六代目中村勘九郎、二代目中村七之助、六代目中村児太郎、四代目中村橋之助といった当代きっての名優たちも、福助の血縁者です。

福助を偲ぶ

福助の短い生涯は、多くの人の記憶に刻まれています。その魅力的な芸風、そして早すぎる死は、後世の人々に深い感銘を与え続けました。加賀山直三による伝記『ある女形の一生 五代目中村福助』をはじめ、舟橋聖一の小説『こころ変り』にも福助が登場するなど、様々な形で、彼の存在は語り継がれています。

まとめ

五代目中村福助は、美貌と気品、そして卓越した演技力で、歌舞伎界に輝かしい足跡を残した役者でした。短い生涯でしたが、その活躍は現在も人々の記憶に深く刻まれ、歌舞伎史に重要な一ページを飾っているといえるでしょう。彼の残した功績は、後世の役者たちに大きな影響を与え続けています。そして、彼の名を冠した舞台は、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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