中村誠太郎

中村誠太郎

中村誠太郎（なかむら せいたろう、1913年2月27日 - 2007年1月22日）は、日本の理論物理学者であり、東海大学の名誉客員教授を務めた人物です。滋賀県彦根市で生まれ、京都帝国大学理学部を卒業後、東京帝国大学（現在の東京大学）で助手として研究活動をスタートさせました。

研究活動と業績

中村誠太郎は、特に素粒子物理学の分野で顕著な業績を残しました。彼は、中性中間子の光崩壊や素粒子のベータ崩壊に関する研究に深く携わり、素粒子群に独自の対称性があることを提唱しました。この対称性の概念は、その後の素粒子物理学の発展に大きく貢献しました。

1953年には、「ベーター崩壊の中間子理論」に関する学位論文を東京大学に提出し、理学博士の学位を取得しました。その後、東京大学理学部で助教授、そして教授へと昇進し、多くの学生の指導にあたりました。1973年に東京大学を定年退官した後も、日本大学や東海大学で教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。

著作活動

中村誠太郎は、研究活動だけでなく、一般向けの書籍執筆にも力を注ぎました。彼の著書は、原子力の基礎知識から現代物理学の最先端まで、幅広いテーマをカバーしており、多くの読者に物理学の面白さを伝えました。

代表的な著書には、『原子力の知識』(1953年)、『放射能』(1955年)、『第三の火 原子力』(1956年)、『極微と極大の世界』(1958年)、『現代物理学の考え方』(1967年)、『中間子の話』(1977年)、『物理学は、どこまで進んだか』(1979年)、『現代物理学の世界』(1988年)などがあります。これらの著書を通じて、彼は難しい物理学の概念を分かりやすく解説し、多くの人々に科学への関心を抱かせました。

また、中村誠太郎は翻訳家としても活躍し、アインシュタインの『晩年に想ふ』をはじめ、多くの物理学関連の書籍を翻訳しました。これらの翻訳を通じて、海外の最新の研究成果を日本の読者に紹介しました。

教育活動と晩年

1973年に東京大学を退官後も、日本大学や東海大学で教鞭をとり続け、教育者としての情熱を持ち続けました。東海大学では、1978年に教授に就任し、その後特任教授も務めましたが、1994年に退職しました。

中村誠太郎は、2007年1月22日にその生涯を閉じましたが、彼の業績と情熱は、今日においても多くの人々に影響を与え続けています。彼の研究と著作は、物理学の発展と普及に大きく貢献しました。

主な著書

『原子力の知識』(1953年)
『放射能』(1955年)
『第三の火 原子力』(1956年)
『極微と極大の世界』(1958年)
『現代物理学の考え方』(1967年)
『中間子の話』(1977年)
『物理学は、どこまで進んだか』(1979年)
『現代物理学の世界』(1988年)
『私の歩んだ道 湯川中間子とともに』(1991年)
『湯川秀樹と朝永振一郎』(1992年)
『20世紀物理はアインシュタインとともに』(2000年)

主な共編著

『原子物理学』(1952年)
『素粒子の本質』(1963年)
『物理科学の世界』(1977年)
『アインシュタイン』(1978年)
『ノーベル賞講演物理学』(1978-82年)
『大学院素粒子物理』(1997-98年)

主な翻訳書

アインシュタイン『晩年に想ふ』(1950年)
『ラザフォード 原子の開拓者』(1956年)
『放射線の恐ろしさ』(1958年)
『原子核物理学』(1966年)
『相対性理論の世界』(1966年)
『現代の物理学 量子論物語』(1967年)
『マンハッタン計画』(1967年)
『相対論はいかにしてつくられたか』(1968年)
『相対性理論の考え方』(1971年)
『新しい物理の世界』(1973年)
『現代の物理学』(1973年)
『「影」の科学』(1977年)
アインシュタイン『自伝ノート』(1978年)
『物理学小辞典』(1979年)
『われらの時代に起ったこと』(1979年)
『双子のパラドックス』(1981年)
『量子]謎をとく』(1990年)
『チャンドラセカールの「プリンキピア」講義』(1998年)

参考文献

中村誠太郎 - コトバンク
* 小沼通二, 中澤宣也, 「追悼 中村誠太郎先生」『素粒子論研究』 114巻 6号 2006年 p.49-76, 素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部, doi:10.24532/soken.114.6_49, NAID 110006243047

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