中村雀右衛門 (3代目)

三代目 中村雀右衛門の生涯と業績

三代目中村雀右衛門（さんだいめ なかむら じゃくえもん、1875年1月2日 - 1927年11月15日）は、明治から大正にかけて活躍した上方の歌舞伎役者です。彼の屋号は京屋で、俳名には梅都や芝斗があります。本名は中島笑太郎（なかじま しょうたろう）です。彼の父は有名な歌舞伎役者である嵐璃笑であり、彼の一生は歌舞伎に捧げられました。

彼の初舞台は明治12年（1879年）のことで、当時は嵐笑太郎という名前で大阪中座に立ちました。その後、父親の死去によって京都で活動し、二代目中村雀右衛門に認められ、養子として中村笑太郎となりました。明治23年（1890年）には、義兄である三代目中村芝雀の死去を受け、義父の意向に従い翌年9月に四代目中村芝雀を襲名します。初めは主に立役として活動していましたが、後に東京で女形の技術を学び、帰阪後には関西の歌舞伎界で一流の女形として名を馳せることになります。

大正3年（1914年）には、大阪浪花座にて『芦屋道満大内鑑』の葛の葉役で三代目中村雀右衛門を襲名しました。彼の特徴的な声は、多くの役者による物まねの対象にもなるほど独特でしたが、小柄な体格は一種のコンプレックスとの闘いでもありました。それでも舞台に立つと、彼はまるで絶世の美女のように変わり、その美しさは高く評価されました。特に『心中天網島』での共演者である初代中村鴈治郎が「この女とやったら死ねる」と述べた逸話は、彼の美に対する称賛の表れです。

雀右衛門は多様な役柄を演じることに長けており、時代物では『鎌倉三代記』の時姫や『祇園祭礼信仰記』の雪姫など、また現代物では『新版歌祭文』のお光や『義経千本桜』のすし屋のお里など、他にも多くの娘役を手掛けました。その他にも、女房役として『摂州合邦辻』や『艶容女舞衣』などでその存在感を発揮しました。

彼はまた、人形振りも優れており、『伊達娘恋緋鹿子』の火の見櫓のお七は特に知られています。19527年11月14日には、『増補忠臣蔵』での三千歳姫役を演じている最中に倒れ、翌日にこの世を去ることとなりました。

雀右衛門は、従来の型にとらわれることなく「京屋型」という新しいスタイルを創造しました。二代目中村鴈治郎は、著書『八人の歌舞伎役者』で「彼は名人ともいうべき女形でした」と語り、彼自身が新しい型を生み出したことを高く評価しています。

雀右衛門の家系には、出征中に戦病死した中村章景がいます。この章景は後に「五代目中村芝雀」に追贈されています。また、四代目雀右衛門は章景の親友だったことから、雀右衛門家に入ることになり、名跡を襲名することとなったという背景があります。

彼の足跡は、歌舞伎界に多大な影響を与え、後の世においてもその名は語り継がれています。

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