立役

立役（たちやく）

立役とは、歌舞伎において標準的な成年男子の役割を指し、その役を演じる俳優をも意味します。立役の特徴は、通常の役柄の中で善人として描かれることが多い点です。具体的には、悪の勢力を象徴するようなキャラクターや、ユーモアを提供する道化役、さらには高齢者を演じる役割などは立役の範疇には含まれません。しかし、今の時代では、多くの役者がこれらの役割もこなすため、立役に明確な位置づけがあるものの、役者による区別は必ずしもここで厳密に行われているわけではありません。

立役は歌舞伎の作品の中で中心的な存在と見なされており、他の役者たちに比べて高い地位が与えられています。一般的に立役の俳優は、座頭（物語の中心人物）として舞台の先頭に立つことが多いです。

役種

立役にはいくつかの主要な役種があり、それぞれ独特な特徴を持っています。

荒事（あらごと）

荒事は、超人的な力を持つ正義の英雄を描きます。この役柄は、勇敢で肉体的に強い性格を強調しており、悪に立ち向かう姿勢が特徴です。江戸歌舞伎特有の様式で、金平浄瑠璃に由来する坂田金平が起源とされています。現代では市川團十郎家によってその伝統が受け継がれ、懐かしいスタイルの作品（例：暫や鳴神）だけでなく、助六や弁慶（勧進帳）のような作品にも荒事の要素が取り入れられています。

実事（じつごと）

実事は、理知的で判断力のある優れた人物が演じる役柄です。この役はしばしばドラマの解決をもたらす役割を果たすため、「さばき役」としても知られています。以前は和事と並んで立役の重要な役種の一つとされており、一座の座頭がこの役を務めることが多いです。たとえば、大星由良助がその代表例として挙げられます。

和事（わごと）

和事は、男女の愛情に焦点を当てた若い男が主人公となる役柄です。この役は、柔らかい印象を持つ美男子として描かれることが多く、歌舞伎の番付の中で「二枚目」と呼ばれるカテゴリーに分類されることから、その語源にもなっています。元禄歌舞伎の談話から生まれた役種でもあり、初代坂田藤十郎などに代表される上方系に加え、初代中村七三郎や初代澤村宗十郎などからなる江戸系のものも存在します。

関連項目

• - 役: 様々な役割に応じたキャラクター設定があり、立役はその中でも重要な位置づけ。
• - 座頭: ストーリーの中心となる役者。立役がこの役を担うことが多い。

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