中東報道研究機関

中東報道研究機関(MEMRI)

中東報道研究機関（Middle East Media Research Institute、略称MEMRI）は、米国ワシントンD.C.に本部を持ち、中東および北アフリカのメディアを監視し、調査・翻訳を行う機関です。この研究所は、1998年にイスラエル軍の情報機関に勤務していたイガル・カルモン（Yigal Carmon）と教授のメイラヴ・ワームザー（Meyrav Wurmser）によって設立されました。MEMRIは、特に2001年9月11日の米国同時多発テロの後にその存在が広く知られるようになりました。

事業内容

MEMRIは、中東および北アフリカにおけるメディアの報道内容を収集し、アラビア語、現代ペルシャ語、ヘブライ語の情報を英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語、ヘブライ語、トルコ語、日本語の8カ国語に翻訳・分析します。これにより、国際的な新聞などに引用されることが多く、様々な国と地域の報道にアクセスできる貴重な情報源となっています。

日本には、MEMRIの支局があり、代表には滝川義人氏が就任しています。滝川氏は、駐日イスラエル大使館で情報担当官を歴任しており、その背景がMEMRIの活動においても重要な役割を果たしています。たとえば、2009年のガザ侵攻時にはMEMRIの記事がハマースの危険性の論拠として引用され、特に注目されました。

財務と支持

MEMRIは、アメリカ合衆国内国歳入庁に501(c)の免税法人として登録されており、その運営費はBradley Foundation、Harold Grinspoon Foundation、Ronald & Mary Ann Lachman Foundation、Koret Foundation、John M. Olin Foundationなどの私人からの寄付によって賄われています。これにより、経済的な自立性を保ちながら、活動を展開しています。

批判と議論

一方で、MEMRIには批判も寄せられています。特に、イスラエルの情報機関出身者が歴代で主任を務めていることから、「イスラエルのプロパガンダ組織に過ぎない」という意見が存在ます。アラブ・イスラム諸国の過激な発言に焦点を当てる一方で、イスラエルやユダヤ教の過激派の発言は無視されているとの指摘もあります。また、翻訳に関しては「意図的かつ恣意的な刊行物である」との批評も多く、日本語版には特に翻訳の誤りや原文との乖離があることが指摘されています。

さらに、アラブ系アメリカ人の一部は、アラブ諸国とイスラエル・欧米の間の後進性を強調する記事が収録される傾向に異議を唱え、「親米・新自由主義的な立場を持つサウジアラビア系メディアの記事に偏っている」との見解もあります。米イスラム委員会では、「MEMRIはイスラム世界から悪意ある引用を見つけて広く拡散させることを目的としている」と厳しく批判しています。

終わりに

全体として、中東報道研究機関はその活動を通じて中東のメディア環境を理解する手助けとなる一方、批判的な見解とのバランスをとる必要があります。このような議論は、メディアの役割や情報の信頼性が問われる現代社会において、ますます重要なテーマとなっています。そのため、MEMRIの活動については、さまざまな視点からの理解が求められるでしょう。

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