中核vs革マル

中核派と革マル派の闘争：立花隆『中核VS革マル』

1974年11月から1975年1月にかけて、講談社の月刊誌『月刊現代』に連載され、後に単行本として出版された立花隆の『中核VS革マル』は、日本の新左翼運動史において特筆すべき一冊です。本書は、当時激しく対立していた中核派と革マル派の党派闘争を詳細に描き出し、その背景や原因を鋭く分析しています。

本書の大きな特徴は、立花隆が中核派書記長であった本多延嘉氏への単独インタビューに成功している点です。このインタビューを通じて、両派の主張や考え方の違い、そして激しい衝突へと至った経緯が克明に語られています。

立花隆は、両派による凄惨な党派闘争の原因を、大きく2点に絞り込んで分析しています。一つは、革マル派構成員の殺害事件に対する中核派の謝罪の欠如です。もう一つは、革マル派が掲げる党派闘争理論、いわゆる「乗り越えの論理」にあります。

革マル派の「乗り越えの論理」とは、党派闘争を「理論上の乗り越え」「組織上の乗り越え」「運動上の乗り越え」という3段階のプロセスとして捉える考え方です。立花隆は、この理論をマーケティング戦略に例え、新製品開発、競合他社の排除、市場独占というビジネス戦略に重ね合わせています。この分析に対し、革マル派は反論を示したとされています。

政治学者である外山恒一氏は、自身の政治塾の学生に本書を読ませた結果、多くの学生が中核派に同情したと述べています。外山氏自身もその一人でありながらも、マルクス主義の観点からは革マル派の主張の方が正しいと評価している点も興味深いところです。

『中核VS革マル』は、単なる新左翼運動の記録にとどまらず、党派闘争の構造、暴力の連鎖、そしてイデオロギーの対立が社会に与える影響を深く考察した、社会学的にも重要な著作と言えるでしょう。当時の社会情勢や、新左翼運動の複雑な内実を理解する上で、本書は不可欠な資料となっています。激しい党派闘争の背後にある思想や戦略、そして人間模様が、克明に描かれています。

本書を読み解くことで、1970年代の日本社会が抱えていた矛盾や葛藤、そして新左翼運動の光と影を多角的に理解することができるでしょう。また、現代社会におけるイデオロギー対立や暴力問題を考える上でも、貴重な示唆を与えてくれる一冊です。当時の新左翼運動に関心のある方だけでなく、現代社会における政治やイデオロギー、そして暴力の問題に関心のある方にも、強くお勧めしたい一冊です。 本書は、単なる歴史的記録としてだけでなく、現代社会を考える上でも重要な示唆を与えてくれるでしょう。

もう一度検索