中沢川 (富士吉田市)

中沢川について

中沢川は、山梨県富士吉田市を流れる一級河川であり、宮川の支流です。相模川上流部にあたる桂川から取水され、吉田盆地の東部を潤しています。一級河川としての指定区間は3.21kmです。

中沢用水の複雑な流れ

中沢川の源流は、富士五湖の一つである山中湖に遡ります。そこから流れ出した桂川は、忍野八海の湧水を吸収し、鐘山の滝で北東へ進路を変えます。その下流にある鐘山下分水場から福地用水が分岐し、さらに下った小佐野分水所では中沢用水が北へと分かれていきます。

中沢用水は、かつて小佐野の里と呼ばれた城山東地区の田園地帯を灌漑しながら流れ、福地用水丸山分水場から取水された城山川の水と合流してお茶屋橋に到達します。また、中沢橋近くの桂川左岸から取水される第1大溝用水も西流してお茶屋橋に集まり、ここで中沢川本流と第2大溝用水に分かれます。

中沢川本流は、中川、中央東水路、下吉田東溝用水などに分岐しながら下吉田東地区を流れ、下吉田東小学校の東側を通り、月光橋で宮川に合流します。一方、第2大溝用水は、頓堀橋や天神橋に架かる水路橋で間堀川を越え、下吉田地区を灌漑した後、宮川橋周辺へと流れ込みます。お茶屋橋から宮川合流点までが、中沢川本川の一級河川指定区間です。

歴史的背景

江戸時代に編纂された『甲斐国志』には、中沢川が「小佐野堰」として記述されており、当時から農業用水として利用されていたことが分かります。かつては愛染地蔵堂付近に湧水池があり、富士講の信者が水垢離をする精進場として使われていましたが、現在は護岸工事によりその姿を失っています。

また、高地で寒冷な気候のため、米の収穫が安定しなかった時代には、流域で冬に水を掛け流して麦を栽培する「冬水」という手法が用いられました。上流の福地村と下流の明見村や瑞穂村などの間では、水利権をめぐる争いが頻繁に発生し、明治時代には裁判沙汰にまで発展したこともありました。

中沢川にかかる主な橋

中沢川には、以下のような橋が架かっています。

お茶屋橋: 山梨県道717号山中湖忍野富士吉田線と中央通が交差する地点
中沢川橋: 国道139号（富士見バイパス）と山梨県道704号新田下吉田線が交差する地点
八王子橋
愛染地蔵橋
愛染橋: 愛染通が通る橋
新田端橋

参考文献

この記述を作成するにあたり、以下の資料を参考にしました。

『富士吉田市史』行政編上巻
『富士吉田市史』通史編第三巻
『富士吉田市史資料編』（二）近代水利編
『富士吉田市史資料編』（三）続近代水利編
『新屋の民俗』（富士吉田市史編さん室）
『北富士すそのものがたり』（岩佐忠雄著）
富士吉田市立図書館蔵『ふるさと物語』（堀内友次著）
富士吉田市立図書館蔵『続・ふるさと物語（水利古文書の解説）』（堀内友次著）

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