中田羽後

中田羽後の生涯と業績

中田羽後（なかだ うご、1896年9月9日 - 1974年7月14日）は、幅広い分野で活躍した日本の牧師かつ音楽伝道者です。彼は福音音楽の発展に大きく寄与し、福音歌手としても高く評価されています。また、詩人、作詞家、作曲家、編曲家、言語学者、指揮者としても非常に多才な人物でした。特に、彼の代表作として知られる「おお牧場はみどり」は、日本の教会音楽の中で特に愛されている作品です。また、彼はヘンデルの『メサイア』の訳者、研究者としても知られ、その演奏家としての活動も行いました。

初期の人生

羽後は秋田県北秋田郡大館町で、牧師の父・中田重治と伝道師の母・かつ子の次男として生まれました。家庭環境は厳格であり、父の影響から早くから教育を受けます。彼は幼少期からホーリネス運動の中で育ち、母の死と父の再婚を経験しました。この情緒的な背景が、彼の人生や音楽にどのように影響を与えたのか、後の活動に深い影を落とします。

牧師としての活動と音楽伝道

羽後は1917年に聖書学院での修行を経て、1918年には日本ホーリネス教会の牧師に任命されます。特に彼にとって転機となったのは、極度の精神的苦痛を抱えていた時期に、伝道者・安部千太郎との出会いでした。彼は彼のもとで「自我に死ぬ」という教えを受け、この教えが音楽伝道への献身につながります。その後、ロサンゼルスでの留学や音楽教育も経て、アメリカで福音音楽を学びました。

帰国後、羽後は1932年に東京ヴォランティア・クワイアを結成し、ヘンデルの『メサイア』を公演したことで知られるようになります。特に、彼はメサイア演奏の第一人者として、多くの信者に影響を与え、福音音楽の普及に貢献しました。彼の努力により、メサイアは日本において普及し、今もなお多くの人々に親しまれています。

逆境を乗り越えて

しかし、彼の人生は常に順風満帆ではありませんでした。1931年、ホーリネスの流れに反するという理由で父からの退会命令が下され、精神的に大きな傷を受けました。その後、しばらくの間、神経衰弱に苦しむこととなりますが、町長から贈られた秋田犬との触れ合いが彼の回復に繋がりました。これをきっかけに歌や聖歌の編纂に取り組み、彼は1958年に新たな聖歌を編纂し出版するまでに至ります。

戦後の貢献

戦後の1947年から1960年にかけて、東京チャペルセンターで音楽主事を務め、地域社会における音楽活動を再開させます。その後、聖書学院を創立し、音楽教育に尽力しました。また、教会音楽の普及やメサイアの演奏など、戦後の日本における福音運動の再建に力を入れました。

羽後の音楽への情熱と不屈の精神は、教会音楽の発展と共に多くの人に感動を与え続けました。彼の貢献は、音楽だけでなく、信仰の面でも多くの人々に影響を与えたことは間違いありません。1974年7月14日に荻窪栄光教会で急逝しますが、その遺志や遺産は今も多くの人に受け継がれています。彼の作品と信念は、これからも多くの教会音楽に影響を与えることでしょう。

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