中立主義

中立主義とは

中立主義とは、国際関係において、戦時・平時を問わず中立の立場を維持することを基本とする外交方針です。これは、特定の軍事同盟に加盟せず、他国間の紛争に介入しない状態を保つことを意味します。

中立主義の形態

中立主義を外交の基本方針とする国家は、永世中立国と呼ばれます。永世中立国は、紛争当事国に対して軍事的な支援を行わず、自国の領土が紛争に利用されることを防ぐ義務を負います。中立の形態には、武装中立と非武装中立があります。

武装中立：自国を防衛するための軍事力を保持しつつ、中立を維持する
非武装中立：軍事力を持たず、外交的な手段によって中立を維持する

類似の概念として、孤立主義や相互不干渉主義、冷戦時代の非同盟主義などがあります。

中立主義の目的

中立主義の目的は、平和主義や国際協調の推進、大国間の勢力均衡を利用した自国の独立維持、地域主義の擁護など、時代や地域、国家の立場によって異なります。中立政策は、小国が自国の安全保障を確保するための手段として選択されることがあります。

スウェーデンの中立政策

スウェーデンは、1843年にイギリスとロシアに対して中立政策を表明して以来、約180年にわたり中立主義を維持してきました。スウェーデンの中立政策は、「戦時の中立のための非同盟」または「中立国スウェーデン」と呼ばれ、同国の外交政策の伝統として認識されてきました。

20世紀には、外交政策に加えて武装中立政策を推進し、自国の防衛力を強化することで中立を維持しようとしました。しかし、冷戦の終結とソビエト連邦の崩壊後、スウェーデンの中立政策は徐々に変化し、1995年には欧州連合（EU）に加盟し、EUの共通外交・安全保障政策と連携するようになりました。

2022年、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、スウェーデンはNATOへの加盟を申請し、2023年3月に正式にNATOへ加盟しました。これにより、スウェーデンの約200年に及ぶ中立政策は終焉を迎えました。

まとめ

中立主義は、国家が国際社会において独自の立場を確立し、自国の利益と安全を守るための外交戦略の一つです。スウェーデンの例からもわかるように、中立政策は時代や国際情勢の変化に応じて柔軟に変化するものであり、国家の生存戦略として重要な役割を果たしてきました。

参考文献

* 武田龍夫 『北欧の外交 -戦う小国の相克と現実-』 東海大学出版会、1998年。

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