中華民国における同性結婚

台湾における同性婚合法化：歴史的経緯と課題

2019年5月24日、台湾はアジアで初めて同性婚を合法化する歴史的な一歩を踏み出しました。この画期的な出来事の裏には、長年にわたるLGBTQ+活動家や支持者たちの粘り強い運動、司法による画期的な判決、そして国民投票という民主主義的なプロセスがありました。本稿では、台湾における同性婚合法化までの道のりを詳細にたどり、その後の展開や残された課題についても考察します。

長年の闘いと社会運動

台湾における同性婚合法化に向けた動きは、1980年代後半から始まりました。当時、結婚に関する法的根拠は「大陸法」であり、同性婚や同性カップルの法的保護は存在しませんでした。活動家たちは、法改正を求める請願や抗議活動を展開しました。

2012年以降、LGBTQ+団体は「多世帯法案」を積極的に推進し、既存の民法について憲法解釈を求める訴訟を起こしました。この訴訟では、同性婚を認めないことが憲法が保障する平等権や自由権を侵害しているとして、司法への判断を仰ぎました。

一方、同性婚反対派は、既存の結婚制度の概念を大きく変えることへの懸念、権利と利益の保護を別の法律で対応できるとの主張などから、法改正に反対しました。

司法院の憲法解釈と国民投票

2015年、同性カップルは、民法の規定が同性カップルの権利を制限していると主張し、憲法解釈を司法院（司法機関）に求めました。そして、2017年5月24日、司法院は歴史的な判決を下しました。同性婚を認めない現行の民法は違憲であり、立法府は2年以内に法改正を行うべきだと判断したのです。これはアジアにおける初の同性婚合憲判決となりました。

しかし、この判決は国民投票へと繋がりました。2018年11月24日に行われた国民投票では、民法改正による同性婚容認案は否決されましたが、既存の民法に手を加えず、新たな法律で同性婚を認める案は可決されました。

法律制定と施行

国民投票の結果を受け、行政院（内閣）は2019年2月20日、同性婚を認めるための法案を提出しました。この法案は、司法院の憲法解釈と国民投票の結果を踏まえたものでした。同年5月17日、立法院（国会）で可決され、5月24日に施行されました。台湾は、世界で27番目、アジアで初めて同性婚を合法化した国となりました。

施行後の課題

同性婚合法化後も課題は残っています。当初は、台湾籍同士、または同性婚が認められている国の外国籍とのカップルのみが同性婚を認められていました。しかし、その後、台湾籍と他の外国籍カップルの婚姻届受理をめぐる裁判が相次ぎ、2022年には、大陸地区人民を除くすべての外国籍と台湾籍カップルの婚姻届を受理することが関係機関に通知されました。

台湾におけるLGBTQ+権利の歴史的意義

台湾における同性婚合法化は、アジアにおけるLGBTQ+権利の大きな進歩を示す出来事です。長年にわたる活動家たちの努力と、司法と立法府の対応、国民の成熟した民主主義的議論によって実現した歴史的成果であり、アジアの他の国々にも大きな影響を与える可能性を秘めています。しかし、完全な平等の実現には、依然として多くの課題が残されています。台湾の経験は、世界中のLGBTQ+の人々にとって、希望と勇気を与えるものでしょう。

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