中野香織

中野香織（なかの かおり）氏は、1962年6月8日生まれの日本のエッセイストおよび服飾史家です。特にラグジュアリー文化を専門分野とし、その歴史や変遷について深く探求しています。国内外での取材に基づいた執筆活動を中心に、講演や教育、さらには企業へのアドバイザリー業務まで、幅広い領域でその知見を活かしています。

経歴と学歴

中野氏の学術的なバックグラウンドは東京大学にあります。富山県立富山中部高等学校理数科を卒業後、1981年に東京大学文学部文科Ⅲ類に進学。1985年に同学部を卒業したのち、教養学部イギリス科に学士入学し、1987年に再び卒業しています。その後、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻の博士課程に進み、1994年に単位取得退学となりました。

学業の傍ら、19歳の頃から旅行ライターとしての活動を開始し、執筆のキャリアをスタートさせました。大学院修了後は、ケンブリッジ大学での客員研究員や東京大学教養学部の非常勤講師などを務め、教育分野にも携わります。その後、服飾史家として本格的な研究活動と並行して、執筆や講演に力を入れるようになりました。

教育者としての活動は多岐にわたり、2008年度から2017年度にかけては明治大学国際日本学部特任教授として教鞭をとりました。2018年には自身の総合研究所および株式会社Kaori Nakanoを設立。さらに2019年度から2021年度には昭和女子大学国際学部英語コミュニケーション学科客員教授を務めました。また、専門家として経済産業省「ファッション未来研究会」委員（2021年秋冬）や、京都クリエイティブ・アッサンブラージュ専門家講師（2021年より）なども歴任しています。

主な著作活動

中野氏は服飾史やラグジュアリー文化に関する多数の著作を発表しており、その分析眼と洞察力が高く評価されています。

主な著書:

『スーツの神話』文藝春秋（2000年）
『モードの方程式』新潮社（2005年、文庫版2007年）
『着るものがない!』新潮社（2006年）
『ダンディズムの系譜』新潮社（2009年）
『愛されるモード』中央公論新社（2009年）
『モードとエロスと資本』集英社（2010年）
『紳士の名品50』小学館（2016年）
『ロイヤルスタイル 英国王室ファッション史』吉川弘文館（2019年）
『「イノベーター」で読むアパレル全史』日本実業出版社（2020年）

これらの単著に加え、共著や翻訳、監修・監訳にも数多く携わっています。特に、海外の服飾史やファッションに関する重要な著作の翻訳、そして専門用語辞典や関連書籍の監修は、日本のファッション研究や理解の深化に貢献しています。

共著・翻訳・監修など:

アン・ホランダー著『性とスーツ』の翻訳（白水社、1997年）
ジャネット・ウォラク著『Chanel』の翻訳（文化出版局、2002年）
『英和ファッション用語辞典』の監修（研究社、2010年）
リサ・チェイニー著『シャネル、革命の秘密』の監修・監訳（ディスカヴァー・トゥエンティワン、2014年）
『フォーマルウェアの教科書〈洋装・和装〉』を共著（日本フォーマルウェア文化普及協会、2019年）
『新・ラグジュアリー』を共著（クロスメディア・パブリッシング、2022年）
『英国王室とエリザベス女王の100年』で解説を担当（宝島社、2022年）
* ジェニー・リスター著『時代を変えたミニの女王 マリー・クワント』の監修・監訳（グラフィック社、2022年）

また、多岐にわたる雑誌や新聞、ウェブサイトでの連載を通じて、最新のファッション動向から歴史的な背景まで、幅広いテーマで読者に語りかけています。「日本経済新聞」や「朝日新聞」、「サライ」、「uomo」、「Forbes Japan」など、その寄稿媒体は多岐にわたります。

メディアでの露出

中野氏はテレビやラジオ番組にも多数出演し、専門家としてファッションやラグジュアリー文化について解説を行っています。NHKの教養番組から民放の情報番組まで、その出演メディアは幅広く、「チコちゃんに叱られる」でのスーツの襟穴に関する解説や、「ニュースウォッチ９」でのエリザベス女王のファッションに関する解説など、様々な切り口で服飾文化の魅力を伝えています。

学術的な知見と一般への分かりやすさを兼ね備えた中野香織氏の活動は、ラグジュアリー文化やファッションが単なる流行ではなく、社会や歴史、人間の営みと深く結びついていることを示唆しています。服飾史家、エッセイストとして、その影響力は今後も広がっていくことでしょう。

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