中須岳士

中須 岳士（なかす たけし）

1968年3月26日生まれ。日本の映像業界において、光と影を操る照明技師としてその名を馳せる人物である。現在は、日本映画テレビ照明協会の副会長（技術部部長）として、業界の発展と後進の育成にも貢献している。

歩みとキャリアの始まり

中須氏は1968年に生まれ、映画製作の道を志した。日本映画学校（現在の日本映画大学）の創設期にあたる第1期生として入学し、専門的な知識と技術の基礎を築いた。学生時代から積極的に現場に出ており、フリーランスの照明助手としてキャリアをスタート。映画、テレビドラマ、CF（コマーシャルフィルム）、Vシネマといった多岐にわたる分野で経験を重ねた。助手時代には、照明界の重鎮である渡邊孝一氏、中村裕樹氏、熊谷秀夫氏らに師事し、実践的なノウハウと照明の哲学を学んだことは、彼の技術の礎となっている。

照明技師としての活動分野

照明技師として独立後、中須氏はその卓越した技術と感性で、数多くの映像作品に関わってきた。

映画作品

特に映画照明においては、年代を超えて多様なジャンルの作品を手がけている。初期の代表作としては「BeRLiN」（1995年）、「東京夜曲」（1997年）などがある。2000年代以降も精力的に活動し、「花とアリス」（2004年）、「武士の一分」（2006年）、「母べえ」（2008年）、「沈まぬ太陽」（2009年）、「生きてるだけで、愛。」（2018年）といった、邦画史に名を刻む作品の照明を担当した。クエンティン・タランティーノ監督作品「Kill Bill」の東京篇にも参加するなど、国際的なプロジェクトにも携わっている。これらの作品を通じて、彼は物語の雰囲気や登場人物の内面を照らし出す、繊細かつ力強い照明表現で評価を得ている。

企業広告

商業広告の分野でも、中須氏は多数の大規模プロジェクトに参加している。アサヒビール、キリンビールといった飲料メーカー、資生堂、ライオン、P&Gなどの生活用品・化粧品メーカー、NTTDoCoMo、三菱電機、NECといった電気・通信メーカー、ユニクロ、洋服の青山といったアパレル関連など、日本を代表する企業のCM照明を数多く手がけ、製品やブランドの魅力を引き出す映像表現に貢献している。

プロモーションビデオ

音楽映像であるプロモーションビデオ（PV）の分野でも、彼の技術は欠かせない存在となっている。浜崎あゆみ、嵐、椎名林檎、SPITZ、Dragon Ash、BUMP OF CHICKEN|BUMP_OF_CHICKEN、Every Little Thing、ゆず、EXILEなど、J-POPシーンを彩る多数のトップアーティストたちのPV照明を担当。楽曲の世界観を視覚的に表現する上で重要な役割を果たしている。

受賞歴と業績

中須氏の照明技師としての功績は、複数の重要な賞によって讃えられている。そのキャリアを通じて、以下のような受賞・ノミネート歴がある。

1995年：日本映画監督協会新人賞
2000年、2005年：毎日映画コンクール照明賞ノミネート
2002年：映画テレビ照明協会技術賞ノミネート
2007年：
第30回日本アカデミー賞 最優秀照明賞
日本映画テレビ照明協会 照明技術賞 最優秀照明賞
日本映画テレビ技術協会 映像技術賞
2009年：第32回日本アカデミー賞 優秀照明賞
2010年：
第33回日本アカデミー賞 優秀照明賞
* 日本映画テレビ技術協会 映像技術賞

特に、2007年に日本アカデミー賞最優秀照明賞を受賞したことは、彼の照明技術が国内最高峰であることを証明するものであり、その後の連続での優秀照明賞受賞や、映画テレビ関連の技術賞受賞も、彼の長年にわたる貢献と技術の高さを裏付けている。

日本映画テレビ照明協会の副会長という立場からも、中須岳士氏は日本の映像照明技術の発展に深く関与し続けている。彼の豊富な経験と卓越した技術は、今後も多くの作品に光をもたらし、業界を牽引していくことが期待される。

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