丸岡城 (越中国)

丸岡城

富山県南砺市西赤尾にかつて存在した丸岡城は、戦国時代に築かれた日本の山城です。この城は、庄川沿いの要地に位置していました。

歴史的背景

中世において、赤尾谷地域は大きく三つの勢力圏に分かれていたことが記録に残されています。『新屋道場由来記』によれば、庄川東岸の新屋を中心とする一帯は平瀬氏、庄川西岸南部にあたる西赤尾は角淵氏、そして庄川西岸北部にあたる漆谷は高桑氏がそれぞれ支配していました。この三分体制は、赤尾行徳寺に伝わる古文書に「赤尾三村」という記述が見られることからも確認できます。

丸岡城について、江戸時代の地理書である富田景周の『故墟考』には「角淵新右衛門居たり、無伝」と記されており、この城が庄川西岸地域を治めていた角淵氏の居館であったと推測されています。また、赤尾行徳寺の開祖として知られる道宗も角淵氏の出であると伝えられています。五箇山史の研究者である高桑敬親氏は、この角淵氏を南朝方の落人ではないかと考えています。高桑氏の説では、角淵新右衛門は南北朝時代の武将である新田義貞に連れられて北陸へ来た人物であり、上野国佐波郡角渕村を拠点としていたことから角淵氏を名乗り、丸岡城を築いて西赤尾に定着したとされます。

さらに高桑氏は、南朝の宗良親王が五箇山の丸岡城に滞在した可能性も唱えています。これは、宗良親王が「越の白山冬深し」や「谷深き雪」といった、当地の厳しい冬の情景を詠んだ歌を残していることからの推測です。ただし、この説は他の歴史史料で裏付けられるものではなく、あくまで憶測の域を出ないものです。

立地と機能

丸岡城が築かれた西赤尾の集落は、交通の要衝に位置していました。南には庄川沿いに白川郷へと通じる道、西にはブナオ峠を越えて刀利や湯涌を経て金沢へ至る道、北には砺波平野へと続く道が通じていました。丸岡城は、こうした重要な交通路を掌握するために築かれた城郭であると考えられています。

現在の城跡と遺構

残念ながら、現在の丸岡城跡には、かつて植物園の建設計画に伴い地形が削平された影響で、目立った遺構はほとんど残されていません。しかし、江戸時代に作成された「五ヶ山西赤尾町村領字丸岡と中所二有之古城跡見取絵図」という貴重な絵図が現存しています。この絵図には、「城跡」本体と「櫓跡体之所」といった遺構が存在したことが見て取れます。

前述の削平によって「城跡」本体の遺構は確認できなくなりましたが、「櫓跡」とされる場所には、土塁で囲まれた平坦な曲輪と、その一段下にある平坦面が現在も残っています。地元の西赤尾集落では、この「櫓跡」を「城の腰」と呼び、そこから行徳寺へと下る坂道を「ヤグラ道」と呼んでいます。こうした地元の呼称も、江戸時代の絵図に記された内容を裏付けるものとなっています。

また、絵図には現在の行徳寺の敷地に「門口体之所」と記されており、土塁で囲まれた長方形の居館が描かれています。この居館は街道に隣接して描かれていることから、丸岡城主が日常的に居住する場所であり、同時に往来を監視する関所の機能も兼ね備えていた可能性が推測されます。

丸岡城は、遺構は少なくても、絵図や地元の伝承によってその存在や構造の一部を知ることができる、赤尾谷の歴史を語る上で重要な山城です。

もう一度検索