丸木清美

丸木 清美（まるき せいみ）

1914年（大正3年）11月12日に生まれ、1994年（平成6年）8月27日に逝去した丸木清美は、日本の医学界、教育界、政治界で多大な功績を残した人物です。

現在の埼玉県毛呂山町にあたる入間郡毛呂村で生を受けた丸木は、旧制埼玉県立川越中学校を卒業後、医師を目指しました。1939年（昭和14年）3月には日本医科大学を卒業し、同年には東京帝国大学（現在の東京大学）の精神科教室に入局。ここでは内村祐之教授の下で研鑽を積みました。

学業の傍ら、1939年（昭和14年）10月には海軍軍医として奉職し、階級は中尉、後に1944年（昭和19年）には少佐へと昇進しました。戦後、1947年（昭和22年）には、祖父である丸木清太郎によって設立された毛呂病院の院長職を引き継ぎ、地域医療に貢献します。

精神科医としての視点から、精神障がいのある人々のための社会福祉施設の必要性を痛感していた丸木は、その設立に尽力しました。1949年（昭和24年）には精神薄弱児施設（現在の障害児入所施設）である育心寮を開設。翌1950年（昭和25年）には救護施設育心寮を開設しました。これらの施設運営を推進するため、1952年（昭和27年）には社会福祉法人育心会を設立し、初代の理事長に就任しています。

また、丸木は政治家としても活動しました。1955年（昭和30年）には埼玉県議会議員選挙で初当選を果たし、以後連続して9期にわたり県政に携わりました。議員としての経験を積み、1965年（昭和40年）には第67代埼玉県議会議長という重責を担っています。

医学研究においても、1960年（昭和35年）3月には東京大学大学院医学系研究科博士課程より医学博士号を取得しています。彼の博士論文の題目は「最急性期における疫痢脳髓の病理組織学補遺」であり、学術的な探求心も持ち合わせていました。

丸木の最大の功績の一つは、教育分野への貢献です。自身の毛呂病院を母体とし、1972年（昭和47年）に埼玉医科大学を創設しました。大学の発展に力を尽くし、1978年（昭和53年）からは1994年（平成6年）に逝去するまで、第2代の理事長を務めました。さらに、1980年（昭和55年）には埼玉医科大学総合医療センターを開設し、高度医療の提供体制を整備。1989年（平成元年）には埼玉医科大学短期大学を開設し、その学長も務めるなど、多角的な医療教育機関の確立に尽力しました。

長年にわたり、精神障がい者の医療体制や福祉サービスの充実に力を注ぎ、また看護師の育成にも貢献した功績が認められ、厚生大臣表彰を受けています。国内での活動に加えて、国際的な視野も持ち合わせ、チベットの難民支援も積極的に行いました。特に、チベットの子どもたちを日本に招き、教育の機会を提供する活動は特筆されます。1965年（昭和40年）には、後に国際政治学者となるペマ・ギャルポ氏も、丸木清美や木村肥佐生らの支援によって来日し、家族の一員のように養育されました。

その長年の地域貢献と功績を讃え、1986年（昭和61年）には毛呂山町名誉町民の称号が贈られています。精力的に活動を続ける中、1994年（平成6年）8月27日、埼玉医科大学理事長の在職中に惜しまれつつこの世を去りました。

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