丹羽鉦電機硬式野球部

丹羽鉦電機硬式野球部（にわしょうでんきこうしきやきゅうぶ）は、愛知県尾張旭市に拠点を置いて活動していた社会人野球の企業チームです。日本野球連盟に加盟し、運営母体であるファインセラミックス関連企業の丹羽鉦電機によって支えられていましたが、短期間でその歴史を終えました。

設立と異色のチーム編成

チームは1973年8月、丹羽鉦電機によって創設されました。当時の社会人野球チームとしては珍しい編成が特徴で、所属選手のほぼ全員が九州地方の出身者で構成されていました。これは、地域的な特色を前面に出すという設立方針の表れだったのかもしれません。チームのスタートにあたっては、同じ愛知県内で活動していた社会人チーム、森藤技研硬式野球部から監督や複数の選手が移籍して加わり、チームの基盤を築きました。

短命に終わった活動期間と解散

チームの活動期間はわずか約3年という短いものでした。1970年代半ばに世界経済を襲ったオイルショックは、日本経済にも大きな影響を与え、多くの企業が経営の舵取りに苦慮しました。運営母体である丹羽鉦電機もその例外ではなく、不況による経営状況の悪化が進みました。

このような背景の中、1976年10月5日をもって、丹羽鉦電機硬式野球部は解散することが決定されました。そして、その決定は1976年10月7日に正式に公表されました。社会人野球界から一つのチームが姿を消すことになったのです。

解散後の新たな道

チームの解散発表と同時に、所属選手の今後の進路についても言及されました。選手の大部分が福岡市周辺で新たな職を見つけ、かつてのチームメイトと共に新しい社会人野球チームを立ち上げる計画が進められていることが明らかにされました。

この計画は実現へと結びつきます。解散当時の丹羽鉦電機硬式野球部監督であった池田和隆氏の父親が、チーム解散の前年にあたる1975年に福岡県糟屋郡志免町で設立していた「あけぼの通商」という企業が、選手の受け皿となったのです。丹羽鉦電機でプレーしていた選手のほぼ全員があけぼの通商に雇用される形で移籍し、1977年には「あけぼの通商硬式野球部」として正式に活動を開始しました。これにより、選手たちは野球を続ける機会を得て、社会人野球界に新たなチームが誕生することとなりました。

プロ野球界へ羽ばたいた選手たち

短い活動期間ではありましたが、丹羽鉦電機硬式野球部からは複数の選手がプロ野球界へと輩出されました。中には、チーム解散後にあけぼの通商へ移籍し、そこからプロ入りを果たした選手も多く含まれています。

以下に主な出身プロ野球選手を挙げます。

川原昭二（投手）：森藤技研から移籍。丹羽鉦電機に在籍中の1974年ドラフト会議で、日本ハムファイターズから2位指名を受け入団しました。
福島秀喜（投手）：丹羽鉦電機に在籍中の1975年ドラフト会議で、日本ハムファイターズから1位指名を受け入団しました。
中村武義（投手）：森藤技研から移籍。丹羽鉦電機に在籍中の1975年ドラフト会議で、日本ハムファイターズから3位指名を受け入団しました。
生田裕之（投手）：チーム解散に伴いあけぼの通商へ移籍。あけぼの通商在籍中の1976年ドラフト会議で、中日ドラゴンズから2位指名を受け入団しました。
島田誠（外野手）：チーム解散に伴いあけぼの通商へ移籍。あけぼの通商在籍中の1976年ドラフト会議で、日本ハムファイターズからドラフト外で入団しました。
井上幹夫（投手）：チーム解散に伴いあけぼの通商へ移籍。あけぼの通商在籍中の1978年ドラフト会議で、阪急ブレーブスからドラフト外で入団しました。
柴田保光（投手）：チーム解散に伴いあけぼの通商へ移籍。あけぼの通商在籍中の1978年ドラフト会議で、西武ライオンズから2位指名を受け入団しました。
地頭方一男（外野手）：チーム解散に伴いあけぼの通商へ移籍。あけぼの通商在籍中の1980年ドラフト会議で、西武ライオンズからドラフト外で入団しました。

まとめ

丹羽鉦電機硬式野球部は、短期間の活動ながらも、そのユニークなチーム構成や、解散後の劇的なチーム移転、そして多くのプロ野球選手を輩出したという点で、日本の社会人野球史において特筆すべき存在と言えるでしょう。オイルショックという時代背景に翻弄されつつも、選手たちが野球への情熱を失わず、新たな舞台へと歩みを進めた軌跡は、多くの人々に記憶されています。

もう一度検索