丹羽鼎三

丹羽 鼎三（にわ ていぞう）

日本の近代造園学界において、研究者そして教育者として多大な足跡を残した人物、それが丹羽鼎三（1891-1967）です。明治24年9月18日に横浜市で生を受けた彼は、昭和42年2月23日、75歳で不慮の事故によりこの世を去りました。

経歴と教育活動

第二高等学校を経て、大正6年（1917年）に東京帝国大学農学部農学科を卒業しました。卒業後すぐに宮内技手として内匠寮に入り、広大な敷地を持つ新宿御苑にて、日本の代表的な花である桜や菊に関する品種改良や栽培研究に没頭します。大正11年（1922年）にはヨーロッパへ留学し、現地の造園事情などを学びました。帰国後の大正13年（1924年）、三重高等農林学校の教授に就任し、教育者としてのキャリアをスタートさせます。

昭和4年（1929年）には母校である東京帝国大学の助教授に迎えられ、園芸学を担当。同年2月には「日本菊花ニ関スル研究」という論文で農学博士号を取得しています。そして昭和7年（1932年）には教授に昇進し、造園学の基礎を築いた原煕の跡を継ぎ、農学部農学科の園芸第二講座で花卉学や庭園学を専門に教鞭を執りました。彼はこの講座を組織的に発展させ、日本の造園学教育の拠点へと育て上げました。昭和27年（1952年）に定年退官し、東京大学名誉教授の称号を授与されました。退官後も教育への情熱は衰えず、昭和29年（1954年）から昭和35年（1960年）にかけては明治大学で教授として園芸学および造園学を担当しています。

多方面での貢献

丹羽鼎三は大学での教育・研究活動に加え、公共分野においても多くの要職を歴任しました。戦前から内務省の専門委員、神奈川県や群馬県の都市計画地方委員会委員、東京緑地計画協議会委員などを務め、都市計画や緑地行政に関与しました。戦後、特に昭和20年（1945年）からは、教育者として新潟県立加茂農林学校の校長を兼任しています。

また、彼は日本の造園学の振興にも尽力しました。昭和初期には、日本の造園研究者たちが集う学術団体である日本造園学会の設立に中心的な役割を果たしました。学会設立後は会長として多大なる貢献をし、実に4期にわたってその重責を務め上げました。

研究と著作

丹羽鼎三の研究は広範に及びますが、特に日本庭園に関する独自の視点が評価されています。単なる技術や様式の解説にとどまらず、日本庭園を日本の歴史や文化、文学と関連付けて考察するという、文化史的・文学的な観点から深く掘り下げた研究を行いました。この精魂込めた研究により、日本庭園の持つ精神性や芸術性を明らかにし、その成果は現代に至るまで高く評価されています。

主な著作としては、樹木に関する詳細な解説書である『日本産樹説要』や、日本庭園研究の具体例を示す『桂離宮の飛石の研究』などがあります。研究論文も多数発表していますが、晩年は「亜青木聖（あおきせい）」というペンネームを用いて、造園や自然、人生について綴った随筆も数多く発表しました。これらの随筆は、造園を単なる技術ではなく、日本文化の真髄に触れるものとして捉えようとする彼の思想をよく表しています。

晩年とLegacy

晩年は白内障や網膜剥離といった眼病に悩まされましたが、研究や執筆活動への意欲は衰えませんでした。「亜青木聖」としての随筆活動も、病と向き合いながら続けられたものです。昭和42年（1967年）2月23日、帰宅途中に交通事故に遭い、突然この世を去りました。彼の墓所は東京都府中市にある多磨霊園にあります。

丹羽鼎三は、造園学の教育体制を確立し、学術研究を深め、そして社会における造園の役割を広げるために多大な貢献をした人物です。特に日本庭園を精神的な深みを持つ文化として捉え直した彼の視点は、後世の研究者に大きな影響を与えました。彼の遺した著作や随筆は、今日でも日本の造園文化を理解する上で貴重な資料となっています。

もう一度検索