主の祈りの教会

主の祈りの教会

主の祈りの教会（Church of the Pater Noster）は、イスラエルのエルサレム旧市街の東、オリーブ山に坐するカトリック・カルメル会の修道院であり、過去にはエレオナ教会としても知られています。この教会は、世界中の100以上の言語で表記された「主の祈り」の銘板が設置されていることで広く認知されています。

歴史的背景

この教会の起源は、4世紀のコンスタンティヌス1世の治世にまで遡ります。当時、教会はキリストの昇天を記念するバシリカの近くに建設され、その後はエルサレム旧市街からほど近いオリーブ山の一角に位置することになりました。教会は、コンスタンティヌスの母、ヘレナによって設立され、「使徒たちの教会」との名が付けられています。歴史家エウセビオスは、この教会がキリストの昇天に関連する洞窟上に立つものと記しています。

ビザンチン時代のエレオナ教会は、614年にペルシャ人によって壊滅的な打撃を受け、破壊されました。十字軍が関与した時代には、この地は「主の祈り」に関連する場所とされ、1106年には小聖堂が、1152年には教会が設立されましたが、1187年にアイユーブ朝のサラディンによる攻撃により再び破壊され、その後は長きにわたり忘れ去られていきました。1345年には、当時の状態は廃墟と化していました。

近代に入り、1851年には教会の遺構が近くの墓地の石材として販売され、多くの人々にその存在が忘れられていきました。19世紀後半には、フランスのラ・トゥール・ドーヴェルニュ家が教会の土地を取得し、エロイーズ・ドゥ・ボッシによって1872年にカルメル会の修道院が建設されました。1910年にはキリストの昇天が行われた洞窟が発見され、1915年には修道院の移転を経てビザンチン時代の教会の再建が試みられましたが、1927年には資金難により工事は一時中断されます。

現在の状況

現在、主の祈りの教会は、回廊や修道院の教会、未完成のエレオナ教会の遺構を含む形で残されています。壁や塀には、世界中の多様な言語で表記された「主の祈り」の銘板が掲げられており、訪れる人々に深い信仰心と世界の多様性を感じさせます。この教会は、宗教的な巡礼地であると同時に、歴史を物語る大切な遺産として、多くの人々にとって特別な存在となっています。

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