主の顕栄祭

主の顕栄祭（しゅのけんえいさい）

主の顕栄祭は、イイスス・ハリストス（イエス・キリスト）が弟子たちに神の栄光を示した出来事を記念する、正教会の十二大祭の一つです。顕栄祭、主の変容祭、変容祭とも呼ばれます。

出来事の概要

イイススは、ペトロ、ヨハネ、ヤコブの3人の使徒を伴い、高い山（正教会ではファヴォル山と伝承）に登りました。そこで、イイススは旧約の預言者モーセとエリヤと語り合いながら、白く光り輝く姿を使徒たちに示しました。イイススと預言者たちは、イイススがエルサレムで受ける苦難と死について話していたとされています。

使徒たちはこの光景に驚き、ペトロはイイススと預言者のために庵を3つ建てることを提案しました。すると、輝く雲が現れ、雲の中から「これはわたしの愛する子、もっとも喜びとしている子である。かれの話をよく聞きなさい」という声が聞こえました。使徒たちは恐れてひれ伏しましたが、イイススは彼らに触れて「立ちなさい。恐れる事は無い」と励ましました。使徒たちが顔を上げると、そこには普段の姿のイイススだけがいました。山を下る際、イイススは「私が死から復活するまで、今見たことを人に話してはならない」と命じました。

意義

この出来事は、イイススが単なる世俗的な王ではなく、神の子であり、神の栄光を持つ存在であることを弟子たちに示したものと解釈されています。受難を前に、弟子たちの信仰を強め、世俗的な思いを離れさせるために、イイススは自らの栄光を顕したのです。

使徒たちが光栄を目撃しながらも疑いと悲しみに沈んだ姿は、人間の弱さを示しています。正教徒は常に神の助けを求め、神が心を照らすように祈るべきです。世の幸福や名声よりも、天国のことを思うように努めるべきです。イイススが光り輝いたことは、人間もまた神の恵みによって光り輝く可能性を持つことを示唆しています。

記憶日と聖堂

顕栄祭は、ユリウス暦を使用する正教会では8月19日、修正ユリウス暦を使用する正教会では8月6日に祝われます。世界各地に顕栄祭を記念する正教会の聖堂や修道院があり、キジ島やメテオラにあるものなど、世界遺産に登録されているものもあります。日本にも顕栄祭を記念する聖堂が複数存在します。

聖堂の名称は、ロシア語の「プレオブラジェンスキー大聖堂」やギリシャ語の「メタモルフォシス修道院」などと呼ばれることもありますが、これらはそれぞれの言語での名称であり、日本語では「顕栄大聖堂」または「顕栄修道院」と訳されます。

果物の成聖

顕栄祭では、果物の初物が成聖されます。これは、すべてのものが神によって創造されたものであり、感謝して利用すべきであることを忘れないためです。特に葡萄が多く持ち寄られますが、他の果物も同様に成聖されます。

参考文献

『諸聖略伝　八月』日本ハリストス正教会教団
高橋保行『ギリシャ正教』（講談社学術文庫）、1980年。ISBN 4061585002

関連項目

主イエスの変容
救世主顕栄大聖堂
救世主ハリストス大聖堂

外部リンク

主の変容祭のイコン - 大阪ハリストス正教会のページ

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